【アニメ感想】【推しの子】第一話「Mother and Children」

アニメ

2023.04.13

1話のあらすじ

産婦人科医のゴロー（CV.伊東健人）はかつて受け持っていた患者の少女・さりな（CV.高柳知葉）の影響で、アイドルグループ「B小町」のセンター・アイ（CV.高橋李依）のファンになる。ところがある日病院に妊娠したアイが現れ、ゴローはショックを受けつつも彼女を出産まで支えることに。けれど出産予定日、ゴローの前に不審者が現れ……。

1話の感想

・初回90分、壮大なプロローグ
第1話はなんとTVアニメとしては異例の90分拡大スペシャル。TVアニメ3話分に相当し、実質映画一本分の長さです。
アイドルオタクの産婦人科医の前に妊娠した推しアイドルが現れるという衝撃の展開から始まる本作。しかしその後も主人公かと思われていたゴローがアイのストーカーによって殺され、アイのこどもとして生まれ変わる（転生）したり、双子の妹も同じく転生者だったり、最終的にはアイが死んでしまうというどんでん返しの連続。とにかくこの物語はどうなっていくのか全く予想がつきませんでした。正直、この第1話をしっかり膨らませればそれだけで1クールアニメが作れそうなほどの濃密さです。しかしそれらを超まとめてプロローグにしてしまうという潔さがすごい。

・初回から90分は正直ちょっと長い
個人的には90分がちょっと長く感じてしまいました。一番の理由は中だるみ。90分の内真ん中の30分くらいでちょっと飽きを感じてしまい、集中が途切れてしまったかなと。個人的には普通に1話30分で通常通り放送してくれても良かったかなーという印象。ただSNSでの感想を見るに、アイが死ぬところまでを放送してくれて良かったという声も多かったので、この辺りの感覚は人によって変わりそう。
実際ラスト20分くらいでまた一気に盛り返してきて初回のクライマックスとしては最高でしたね。

・芸能界の光と闇はリアル、主人公2人に関しては非現実的
転生してる時点でリアルも何もないんですが、明らかにこどもから逸脱してる主人公の双子に対して周囲の人々（主に社長夫人と監督）の反応がイマイチ受け付けませんでした。コナンくんが平然と殺人事件の現場をうろうろしてても何も言わない大人たちに対する違和感と同じそれ。アニメなんだから、ファンタジーなんだからって言われたらぐうの音も出ないので、この辺りも好みかもしれませんね。
個人的には現象自体はファンタジーであって、それに対する人間の感情はリアルであってほしいオタクなので。
ただ一方でアイドルや芸能界の闇や裏側に関しては非常に良く描かれていて、実際これが現実とは違ったとしても、きっと実際に似たようなことはあるんだろうなと思わせる説得力がすごい。

・嘘によって輝くアイドル
アイは嘘を肯定するアイドルとして描かれ、こどもがいることを隠し通してこそのアイドルと平然と笑って見せます。アイドルといえばファンに夢を見せる・与える存在として描かれることが多いですが、嘘吐いてたっていいじゃんというマインドが新しい。ファンは綺麗な嘘を求めていて、アイドルはそれにこたえるように綺麗な嘘を吐き続ける。かなり新しいアイドルを描いたアニメです。
また施設で育ち愛を知らないというアイが、死の間際になってようやく自分の子たちに「愛してる」と伝えるシーンにもぐっときました。たとえ最初は嘘だったとしても続けていればいつか本当になる、と第1話の一貫したテーマを感じました。

・作画、声優、音楽ともに超ハイレベル
まずもって目を引くのが圧倒的なキャラデザと作画。キラキラに輝くアイの瞳や髪、表情一つとってもとにかく繊細にこだわって描かれていて、アイドルオタクでなくても思わず引き込まれる作品とキャラのパワーを非常に感じました。アイというアイドルの説得力が凄いんですよね。年々レベルが上がっているTVアニメの作画がさらに一歩進化したなという印象です。
声優としては最もインパクトがあったのがやはりアイ役の高橋李依さん。特にラストの長尺は声を出すのも精一杯という重傷の中で、こどもたちに初めて嘘のない「愛してる」を伝えるというこの第1話最大の見せ場。お芝居の深さと一言一言の重みに震えました。
またルビー役の伊駒ゆりえさんはこれが初レギュラー作品となる新人さんですが、それを感じさせない素晴らしいお芝居でした。特に終盤のネットの心ない言葉に泣きながら怒るシーンにはぞくっとさせられました。今後も突き抜けたお芝居をしてほしい。