「OVER REQUIEMZ」とは

「OVER REQUIEMZ」(以下オバレク)は乙女ゲームブランド「オトメイト」より2025年4月17日に発売されたNintendo Switch専用の女性向け恋愛アドベンチャーゲーム。
異世界へと迷い込んでしまった主人公が、4人の死刑囚たちと監視役の“魔女”とともに、異形の怪物が出現するという「廃墟」を探索しながら帰る方法を探すダークファンタジー。
メインキャラクター5人の攻略ルートは途中で「真相ルート」と「闇堕ルート」へと分岐し、それぞれ2つずつエンディングを迎えます。
闇堕ルートではメインキャラクターたちがその名の通り容赦なく闇堕ちしていき、絶望的な悲劇の結末を迎えることも……。
ヤンデレなイケメンが好きな乙女ゲーマーにはぜひプレイしてほしい名作。
主なスタッフ・キャスト
あらすじ
国王と、4人の魔女が治める国「オズ」。
そこには「廃墟」と呼ばれる謎の建造物が点在していました。
朽ちたビル、蔦の絡まった電車。
あなたにとっては見慣れた、けれどこの国では異質な建物。
廃墟の奥には、異形の生き物さえ闊歩しているとか。
そんな異世界に迷い込んだあなたは、
理不尽にも死罪を言い渡されます。
免れるには、化け物がうろつく危険な廃墟調査へ赴くしかない。
旅を共にするのは、同じく死刑囚となった青年たち――
かつて人を手に掛けた「殺人鬼」たち。
癖のある彼らに翻弄されながら、
あなたは廃墟に向けて旅することになります。
そして多くの選択を迫られるでしょう。
けれど、ひとつだけ覚えておいてください。
死んでいい命なんて、ないんですよ。
あなたと殺人鬼たちとの、終わりへ向かう旅が始まります。
(公式サイトより引用)
自由な選択肢
本作最大の特徴が自由に選べる選択肢。シナリオの中で度々3択の選択肢が出てきますが、本作には好感度システムがないためどれを選んでも物語には影響がありません。これが画期的。
選択肢ごとに会話が変化するのも秀逸で、自分の気持ちに一番近い選択肢を選ぶのも良し、明らかにふざけた選択肢を選んでコミカルな会話を楽しむのも良し、全選択肢をコンプリートするのも良し。

また1話に1回ずつ、選択タブの背景がピンク色の選択肢も出てきます。これは正しい選択肢を選ぶと、ご褒美ボイスをゲットできるというもの。入手したご褒美ボイスは「Reward」にて確認することができます。
このご褒美ボイスは各キャラクターごとになんと全36種(!)も用意されていて、シナリオの進行具合やご褒美選択肢によって獲得できるシステム。
本編ではあまり味わえなかったちょっと甘いシチュエーションボイスも多数あるので、ぜひコンプリートを目指してみてください。
個人的にたまらなかったのが、メタ的な要素のある「異世界が侵食する」と「ここから伝えたい」の二種。意味を理解した瞬間、鳥肌が立ちました。

真相と闇堕ふたつのルート
もうひとつ特徴的なのが物語の途中で二つのルートに分岐するシステム。物語のちょうど真ん中(5話の終盤)で2択の選択肢が登場し、「真相ルート」か「闇堕ルート」かを選ぶことができます。
前述した通り好感度システムはないため、ここでの選択でその後の展開が大きく変わることになります。
真相と闇堕、どちらから先に攻略するかは好みの分かれる部分かもしれません。
私は闇堕→真相の順で攻略しましたが、この順番のメリットは散りばめられた伏線を楽しみながら攻略できることと、何より最後に二人の幸せな姿を見て気持ちよく終われること。デメリットは幸せになるまでが果てしなく遠く感じられるので心が折れそうになること。
逆に全てを知った上で闇堕はIFの世界線として楽しみたいという方、もしくはハッピーエンドよりバッドエンドやメリバが好きという方は真相→闇堕の順で攻略するのもいいかもしれません。

大ボリュームのシナリオ
ゲーム冒頭のいわゆる共通ルートはかなり短め。その代わり個別ルートは大ボリュームで全員15話分ずつ。5話で真相ルートか闇堕ルートへ分岐し、その後どちらもそれぞれ5話ずつ展開されます。
1話分が大体25分~30分程度(じっくりプレイで)あるので、1人分攻略するだけでも(真相・闇堕合わせて)TVアニメで言うところの全15話ほど。それが5人分あるのでとんでもない大ボリュームでした。
しかも各キャラごとのストーリー展開は全くの別物で、なおかつ真相ルートと闇堕ルートも分岐直後から大きく変化していきます。
エンディングの数も真相ルートが2つ、闇堕ルートが2つの計4つずつ。その中で完全なハッピーエンドはたった1つだけ。ただし他のエンディングも決して単なるバッドエンドというわけではなく、むしろ悲しい結末の方が心に残る場合も……。
モチーフは「オズの魔法使い」
タイトルの頭文字と最後の文字を合わせると「OZ」になる他、物語の舞台となる国の名前が「オズの国」であることからも分かるように本作のモチーフは世界的に有名な児童文学「オズの魔法使い」です。
元のお話を知らなくても全く問題なく楽しめますが、大まかなあらすじや登場人物を知っているとよりシナリオや考察が楽しく感じられるはず。
「オズの魔法使い」はライマン・フランク・ボーム著の児童文学。
少女ドロシーが飼い犬のトトと共に竜巻に巻き込まれて不思議な「オズの国」に飛ばされてしまう物語。
元の世界に戻る方法を探してエメラルドの都に住むオズの魔法使いに会うため、知恵を求めるカカシ、心を求めるブリキの木こり、勇気を求める臆病なライオンと旅をするというストーリー。
各個別ルートのタイトルからクロード=知恵を求めるカカシ、モリィ=心を求めるブリキの木こり、ノイル=勇気を求める臆病なライオンであることが分かりますが、ではカイゼとドロシーは……? というのが興味をそそられるポイント。
特に本来であれば主人公の名前であるはずのドロシーが攻略対象の男性キャラにあてがわれている理由が本作最大の謎と言っても過言ではありません。全ての謎が明かされるドロシールートはぜひとも一番最後に攻略することをオススメします。
ちなみに攻略制限は一切ないため、自分の好きなキャラクターから順に攻略できるのも評価ポイント。個人的なオススメの攻略順はクロード→モリィ→ノイル→カイゼ→ドロシーですが、クロード・モリィ・ノイルに関してはそこまで順番にこだわる必要もないので気になるキャラから攻略するのが良いと思います。
便利なフローチャート機能
クイックセーブ・クイックロードや次の選択肢・未読部分までのジャンプなど一般的な機能の他に、特に便利だったのがフローチャート機能。これがもう便利すぎておんぶにだっこ状態でした。
一度読んだシナリオならばプレイ中でもすぐ好きなキャラクターの好きな話に飛べるという、文字通りのフローチャート。

また会話ログから巻き戻す機能も便利で、3択選択肢の全パターンを回収するのにも大活躍。システム面が充実していてストレスなくプレイすることができました。
二人目以降はプロローグをスキップしてすぐキャラクター選択に移れるのもノーストレス。
イラストやBGMもハイクオリティ
購入の決め手となった最大のポイントはキャラクターデザインが好みだったからなのですが、その期待を裏切らない素晴らしいクオリティでした。
スチルの美しさはもちろんのこと、立ち絵が本当に美麗。数種のポーズに表情差分も数種類、そのどれもが美しい。
特にお気に入りなのがクロード(←)。何度見ても惚れ惚れしますね。
主人公を除けば唯一の女性キャラクター南の魔女グリンダのデザインも素晴らしい。一目惚れでした。
主人公のデザインも過度に美少女過ぎず、でもオシャレでハイセンス。表情差分も可愛くて、コロコロ変わる表情に癒やされました。
また完全なるネタバレになるので詳細は伏せますが、ドロシーの真相ルートに登場するとあるキャラクターのデザインが本当に最高でした。FDが出るならぜひあの姿をまた見たい……!
スチルは各キャラとも16枚、差分を含めると19枚。どれも美麗な上に数も多く大満足の内容。
BGMも印象的な曲が多く、イントロを聴いただけで場面が浮かんでくるほど。「最後の戦い」という曲が特に好きで、何十回もリピートしました。
各ルートの所感(ネタバレなし)
真相ルート(Ending B・Ending O)
攻略対象の中でもメインの扱いということもあって特にEnding Oはおそらく全ENDの中でも最も王道のハピエン。両者とも黒目黒髪なのでビジュアル的には一番お似合いかも? 「OVER REQUIEMZ」のタイトル回収も鳥肌でした。
闇堕ルート(Ending R・Ending N)
全ENDの中で一番好きだったのがEnding N。背筋がゾッとする系ホラーが好きな人には超オススメ。また分岐直後の展開はかなり意外ですが、それが後に闇堕ちするきっかけとなってしまうシナリオがこれまた上手い。
CV.阿座上洋平
代表作:「機動戦士ガンダム 水星の魔女」グエル・ジェターク、「勇気爆発バーンブレイバーン」ルイス・スミス、「鴨乃橋ロンの禁断推理」鴨乃橋ロン、「忘却バッテリー」藤堂葵
少しボソボソとした落ち着く低音ボイスと、とある場面では少々中二病っぽい高圧的な喋りのギャップがとてもユニーク。これまではどちらかというと明るいキャラクターのイメージが強かったので、静かでクールなお芝居最高でした。声がいい……! あと闇堕ルートでのちょっとホラーなお芝居も素敵、怖いよりニヤけてしまいました。
真相ルート(Ending R・Ending O)
本作のテーマのひとつが「過去(後悔)から逃げずに向き合うこと」だと感じたのですが、それが最も顕著に現れているのがクロードルート。恋人よりパートナーという関係がよく似合う爽やかな二人でした。
闇堕ルート(Ending A・Ending M)
全ENDの中で最初にクリアしたのがEnding M。最後の主人公の表情が忘れられません。Ending Aは特にトラウマになったEND。限界まで堕ちて病んでしまったクロードが怖すぎて、1人目だったこともあり「こんな怖いのがあと4人分もあるの!?」と絶望したのも今はいい思い出。END分岐する前の、必死に悪夢へ立ち向かう主人公が大好きです。
CV.古川慎
代表作:「ワンパンマン」サイタマ、「かぐや様は告らせたい」白銀御行、「Dr.STONE」大木大樹、「吸血鬼すぐ死ぬ」ロナルド、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」シャディク・ゼネリ
普段と闇堕ちで最も声の落差が激しいと感じたキャラクター。闇堕ち演技がとにかく怖い! 痛い描写は一切ないにも関わらず怖くて仕方なかった理由は演技が怖すぎたからかもしれません(褒め言葉)。でも普段の親戚のお兄さん的な親しみやすい声の方がやっぱり好きです。あと一部ボソボソと喋る場面では声が小さめなので、BGMのボリュームを少し低めに設定するのがオススメ。
真相ルート(Ending P・Ending R)
とある理由から主人公とカイゼに対してお兄さんぶって接してくれるモリィの優しさが身に沁みます。闇堕ルートでははっきりと描かれなかった黒幕の正体が明かされ、あっと驚かされました。主人公の危機を意外な人物が助けてくれたのも涙腺に来ます。
闇堕ルート(Ending A・Ending Y)
闇堕ルートに分岐してすぐ主人公が拷問に近い悲惨な目に遭うため、グロ耐性がない方や痛いのが苦手な方は要注意。私はここで一度心が折れました。モリィルートは総じて痛々しい描写が多いので心が疲弊しがちです。ただ苦しむ主人公を慈しむモリィにはだいぶ心救われました。主人公を守りたいがために病んでいく展開もよくできています。でも本当に辛かった……。
CV.石川界人
代表作:「ハイキュー!!」影山飛雄、「ワンパンマン」ジェノス、「僕のヒーローアカデミア」飯田天哉、「青春ブタ野郎シリーズ」梓川咲太
ちょっと珍しい可愛い系(?)の声とお芝居。全体通してあまり感情の振れ幅がないにも関わらず、彼の正体が明らかになるに連れて声の印象が変わってくるのもさすが。またモリィルートと他キャラのルートでもだいぶ聴こえ方が違います。どこまで感情を出すか緻密に計算されていて、改めて演技力の高さに感服いたしました。
真相ルート(Ending R・Ending E)
このルートに限らずですが旅の中で逞しく成長し、持ち前の諦めの悪さで希望に食らいつく主人公がとてもかっこいい。終盤で明かされた過去の事件の真相は、真犯人が救いようのないクズで悲しかった……。その分、完全ハピエンのEnding Eは清々しかったです。
闇堕ルート(Ending L・Ending Y)
モリィの闇堕ルートほどではありませんが少々痛い描写あり。結末よりもそこに至るまでのシナリオが一番好きなルートでした。特にEND分岐直前のQuest10が大好きです。全ルートの中で一番糖度が高いかも?
CV.鈴木崚汰
代表作:「勇気爆発バーンブレイバーン」イサミ・アオ、「Dr.STONE」七海龍水、「ウィッチウォッチ」乙木守仁、「かぐや様は告らせたい」石上優、「ツイステッドワンダーランド」トレイ・クローバー
個人的に推し声優ということもあってひたすら幸せでした。声がいい! 演技が上手い! そして声がいい! 荒々しさの中にも優しさを感じられるお芝居素敵でした。最近はアニメも乙女ゲームも出演作が増えていて嬉しい限りです。
ドロシー
慇懃無礼な北の魔女。本作最大のキーパーソン。5人の中では唯一、殺人鬼でも死刑囚でもなく罪人たちの監視役として旅に同行。主人公をなぜか「お嬢様」と呼び溺愛し、息をするように嘘を吐く、ザ・おもしれー男。一番最後に攻略推奨。
真相ルート(Ending W・Ending I)
分岐直後から怒涛の伏線回収で文句なしに一番面白かったです。ドロシーの正体や主人公との関係だけでなく、オズの国や異世界の謎ほぼ全てがここで明かされます。完全なるハピエンを迎えるEnding Iも素晴らしいですが、Ending Wのメリバも捨てがたい。
闇堕ルート(Ending S・Ending H)
真相ルートで全てを知った後だと、彼がなぜ闇堕ちしたのか深く納得しました。主人公が悪いわけではないけれど、ドロシーの心境を想うと……そりゃ病むわ……。
CV.堀江瞬
代表作:「アイドルマスターSideM」ピエール、「僕の心のヤバイやつ」市川京太郎、「ミギとダリ」ミギ
限界まで声を低くした、とのことで実際かつてないほどの低音にびっくりしました。ファンなら絶対にプレイしてほしい。損はしません。それほどにこれまでの殻を破った新境地です。この役を演じられるならきっと今後どんな役でもできるはず。
※画像は全て公式サイトより引用しています。
シナリオ重視の名作ダークファンタジー
本作は間違いなく名作乙女ゲームですが、実際にプレイしてみて感じたのはかなり人を選ぶ内容だということ。
まず大前提としてヤンデレや闇堕ちが苦手な人にはあまりオススメできません。グロ要素やハードな展開も多く、ダークな物語にある程度耐性がないとしんどくなる可能性があります。
しかし一方で真相ルートに目を向ければその完成度は非常に高い。伏線回収も素晴らしく、世界観や設定の作り込みも緻密。
何よりも、各キャラクターと主人公が旅の中で距離を縮めていく過程やお互いに好意を抱いていく流れも丁寧で自然。
ただシナリオ重視ということもあって甘さはかなり控えめ(キスシーンがある程度)。結ばれるまでをじっくり描いているため、ほとんどイチャイチャしてくれません(FDでなにとぞ……)。
なのでじっくり読み応えのあるダークファンタジーが好きな人には超オススメです。









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