アニメアニメレビュー

【アニメレビュー】愛憎渦巻く人間ドラマを彩るは豪華声優陣による国宝級の名演技「昭和元禄落語心中」

スポンサーリンク

少し懐かしいアニメをレビューするこのシリーズ。あまり知られていない隠れた名作や、最近アニメを見始めた人にもぜひ見てほしいオススメアニメなどを取り上げていく予定です♪

ちなみに前回の記事はこちら↓

そして今回レビューするのは2016年に放送されたTVアニメ「昭和元禄落語心中」、そして2017年に放送された第2期「昭和元禄落語心中-助六再び篇-」です。

原作:雲田はるこ
監督:畠山守「かぐや様は告らせたい」
シリーズ構成:熊谷純
キャラクターデザイン:細居美恵子
音楽:澁江夏奈
アニメ制作:スタジオディーン「薄桜鬼」

放送期間:2016年1月-4月(1期)、2017年1月-3月(2期)
話数:全13話(1期)、全12話(2期)
ジャンル:人間ドラマ、落語

昭和元禄落語心中」は雲田はるこさんによる漫画が原作のTVアニメ。昭和の落語界を舞台に愛憎劇を描いた作品。

原作は第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞や第38回(2014年度)講談社漫画賞一般部門、第21回手塚治虫文化賞新生賞など数々の賞を受賞するなど高く評価されています。

あらすじ

刑務所帰りの元チンピラ強次は1年前に慰問で刑務所を訪れた八代目有楽亭八雲ゆうらくていやくもの落語「死神」を聞いた感動が忘れられず、出所後そのまま八雲のもとへ向かい弟子入りを志願する。弟子は取らない主義の八雲はしかし「帰るところがない」という強次を気まぐれに付き人として迎え入れ、彼に「与太郎よたろう」の名を与えるのだった。

住み込みで働くことになった与太郎は八雲の家で暮らす養女・小夏と出会う。若くして亡くなった彼女の父・二代目遊楽亭助六すけろくの落語に惚れ込む与太郎だったが、八雲と助六、そして小夏には複雑な因縁があることを八雲の付き人・松田さんから聞かされる。

そんなある日、八雲の独演会で大失態を犯した与太郎は破門を言い渡されてしまう。落ち込む与太郎は小夏に背中を押されて必死に頭を下げるが、八雲は破門を取り消す代わりに「3つの約束を守ること」を言い渡す。そして自身と助六について長い昔話を語り始め――。

アニメ史に残る名演技の数々

アニメ版落語心中最大の見どころと言えば何と言っても豪華な声優陣による名演技の数々。主演の関智一さんを始め、八雲役の石田彰さん、助六役の山寺宏一さんは放送当時からすでに演技派のベテラン声優として知られていました。
役を演じながら落語もしなければならないこの三役は桁違いの難易度。この三名でなければ成立しなかったであろうアニメと言えます。

「昭和元禄落語心中」与太郎

関智一さん
代表作:「ドラえもん」スネ夫
「機動武闘伝Gガンダム」ドモン・カッシュ
「Fate/stay night」ギルガメッシュ
「のだめカンタービレ」千葉真一
「PSYCHO-PASSサイコパス」狡噛慎也
「妖怪ウォッチ」ウィスパー
「鬼滅の刃」不死川実弥
「呪術廻戦」パンダ 他多数

八代目有楽亭八雲に弟子入りするところから始まるこの物語の主人公与太郎を演じる関智一さんは、なんと偶然にも本作のアニメが始まるよりも数年前に落語家の立川志ら乃さんに弟子入りしていたそう。
そのためかメインキャストの中では唯一オーディションを受けずに決まったのだとか。

与太郎は八雲と並んで落語を披露する場面の多い人物。
八雲の「死神」を聴いて感動し弟子入りを決意したということもあって落語は全くの素人状態から入るわけですが、物語が進むごとに前座から二つ目、そして真打ちへと昇進していきます。

与太郎に限らず八雲にも言えることですが、この二人は作中で落語家としての成長が丁寧に描かれており、その分演じるさんと石田さんはまだ下手な頃と上達してからの完成された落語を演じ分けなければいけません。

与太郎と八雲という役を演じながら、役を通して落語を演じ、さらに上手い下手を演じ分けるのは素人目から見てもあまりに難易度の高い芸当。

特に石田さん演じる八雲は超ハードモード。幼少期を除き青年期から老年期までを一人で演じ抜いていますが、それはつまり若々しい声と老いた声、拙い落語と完成された落語を演じ分けるということ。

落語は噺の中に登場する何人もの人物を身振り手振りだけで表現する伝統芸能。
石田さんは青年期から老年期までの八雲を演じながら、その八雲が演じる落語の中の登場人物までもを演じ分けています。想像を絶する演技力に何度も圧倒されました。

落語以外でもその演技力に脱帽する場面は多々あり、特に第2期第12話での老→若→老へと変化していく八雲の演じ分けは鳥肌モノでした。

「昭和元禄落語心中」八雲

石田彰さん
代表作:
「新世紀エヴァンゲリオン」渚カヲル
「機動戦士ガンダムSEED」アスラン・ザラ
「NARUTO-ナルト-」我愛羅
「銀魂」桂小太郎
「夏目友人帳」名取周一
「Dr.STONE」氷月
「鬼滅の刃」猗窩座
「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」長田幻治 他多数

そもそもがクールで影のある美青年キャラに石田さんの声はあまりにもハマリ役。落語や芝居の中で演じる女役に定評のある八雲役に、中性的なキャラクターを多く演じてきた石田さんが選ばれたのも納得です。

山寺宏一さん
代表作:
「らんま1/2」響良牙
「新世紀エヴァンゲリオン」加持リョウジ
「カウボーイビバップ」スパイク・スピーゲル
「アンパンマン」ジャムおじさん、チーズ 他多数

小林ゆうさん
代表作:
「銀魂」猿飛あやめ
「進撃の巨人」サシャ・ブラウス
「イナズマイレブンGO」霧野蘭丸 他多数

林原めぐみさん
代表作:
「新世紀エヴァンゲリオン」綾波レイ
「らんま1/2」女らんま
「名探偵コナン」灰原哀
「ポケットモンスター」ムサシ 他多数

助六役の山寺宏一さんは大学時代落語研究会に所属していた過去があり、落語経験者ということもあってか天才落語家の助六に説得力を持たせています。
特に第1期第12話で披露する落語「芝浜」は絶品。その内容も相まって思わずほろりと来てしまう名演。

助六の娘・小夏役の小林ゆうさんもプライベートで演芸場へ行くほどの落語好きだそうで、作中で落語を披露するシーンもある小夏役にぴったり。
しっかりものの姉御肌でありながら繊細で脆い一面も持つ難しい役どころも見事に演じています。

メインキャラで唯一落語と関わりのないみよ吉もしかし非常に重要な人物。悲劇的で八雲に多大な影響を与えるみよ吉を、林原めぐみさんが深い情念を込めて演じておりこれまた素晴らしい。

この他にも牛山茂さん、家中宏さん、柴田秀勝さん、土師孝也さんと言った吹き替えでも活躍する大ベテランから遊佐浩二さん、山口勝平さん、関俊彦さん、そして小松未可子さんや小野友樹さんなどの若手(当時)まで全編通してとにかく豪華な布陣。

声優の豪華さもさることながらとにかくどこを切り取っても声優陣のお芝居が素晴らしいこともありますが、「落語には正解がない」「声を変えるのではなく喋り方で演じ分ける」など落語家と声優に近いものが感じられるなのが面白いところ。実際、本作にも声優として落語家の方も出演しており、そういう意味でも声優好きな人や声優を目指しているという人にはぜひとも見てほしい一作です。

物語とリンクする落語

作中には実在する様々な落語が登場します。一部分のみ披露されたものも含めれば1期・2期合わせて実に40作以上の演目が使われました。

落語に馴染みがないと下町言葉ということもあって最初は内容を理解するのが少し難しく感じるかもしれません。しかしフル尺で最初から最後までじっくり描かれる演目に関しては、声優陣の熱演も相まって落語初心者でも思わず聞き入ってしまうはず。

また作中で披露される落語の演目が、その時その人物が置かれている境遇や抱いている想い、その演目の登場人物が辿る末路とリンクしているのも名作と評される理由のひとつ。

たとえば第1話で与太郎が披露する「出来心」という演目はなにをやっても上手くいかない間抜けな泥棒が主人公。お調子者で単純なのにどこか憎めないこの泥棒は与太郎にそっくり。

また第12話で助六が披露した「芝浜」は夫婦の愛情を描いた人情噺。酒好きでうだつの上がらない行商人の主人公が大金の入った財布を拾ったところから始まり、紆余曲折を経て妻とともに真っ当な人生を歩みだすという演目。

「昭和元禄落語心中」助六

天才落語家ともてはやされながらも師匠たちとの軋轢や妻との不和が原因で落ちぶれていた助六が立ち直ろうとして選んだこの演目は、助六と主人公の心境が重なって思わずほろりと来る作中屈指の名シーン。

与太郎が落語家を目指すきっかけとなった八雲の「死神」も本作を象徴する演目のひとつ。作中何度か披露されるこの「死神」は石田さんの怪演もあって思わず息を呑むほどゾッとさせられる怪談噺。

特に第2期第9話では「死神」の主人公と八雲がリンクし、死んだはずの助六が死神となって現れるなど衝撃的な展開も。与太郎にとっても八雲にとってもその後の運命を大きく変える演目となりました。

八雲と助六を巡る愛憎劇

第1期の2話〜12話までは幼少期の菊比古(後の八雲)と初太郎(後の助六)が7代目八雲のもとで出会い、そして悲劇的な別れを迎えるまでが描かれます。
天性の才能を持ちながらも落語界に嫌われ夢破れた初太郎と、地道な努力でその才能を開花させていくも初太郎の才能に憧れと嫉妬を抱き続ける菊比古。

菊比古がいかにして八雲の名を継ぐことになったのか、本作はそこに至るまでの彼の葛藤の物語でもあるわけですが、それはまた「八雲」と「助六」の名を継ぐ者たちの愛憎を巡る物語でもあります。

そんな「八雲」と「助六」の長きにわたる悲しい因縁に終止符を打つのが主人公の与太郎。八雲の弟子となり後に3代目助六の名を継いだ与太郎が最終的には……という結末が非常に美しい。

また彼らに多大な影響を与えるのが芸者のみよ吉と助六の娘の小夏。ふたりの女性たちと落語を巡る愛と憎しみの物語も人間ドラマに深みを与えています。

「昭和元禄落語心中」みよ吉
「昭和元禄落語心中」小夏

そして第2期通して最後まで謎として描かれるのが小夏の息子・信之助の父親が誰なのか、という問題。結局謎は謎のままで真相が語られることはありませんが、最終話で提示されたひとつの仮説はかなり衝撃的なもの。

その仮説を知った上で1話から見直すとまるで見方が変わってきます。見る人によっては少々受け入れがたいかもしれません。しかし人間の弱さや情けなさもひっくるめて愛そうとする本作だからこそ、でもあるように思いました。

「昭和元禄落語心中」はどこで見られる?

※本ページの情報は2025年8月時点のものです。
最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。

関連商品

とりあえずどんな話か気になる人は原作コミックス1巻もオススメ↓

全巻揃えたい人は「漫画全巻ドットコム」がオススメ↓

関連記事

少し懐かしいアニメや名作をレビューするこのシリーズは今後も随時更新予定です♪

スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
Twitterフォローもよろしくお願いします!

コメント

タイトルとURLをコピーしました