あらすじ
ハロウィンが間近に迫る渋谷の一角で、タキシード姿の高木刑事とウェディングドレスに身を包んだ佐藤刑事の結婚式が行われようとしていた。コナンや少年探偵団、毛利親娘と警察関係者が見守る中、突然式場に数名の暴漢が乱入。小五郎や刑事たちが暴漢を取り押さえようと乱闘になるが、佐藤刑事を庇い高木刑事が撃たれてしまう。
一方その頃、安室透こと降谷零は部下の風見と共に、かつて同期の萩原と松田が殉職した連続爆破事件の犯人が逮捕後逃走したという情報を掴み、犯人を捕まえるべく張り込みをしていた。タレコミ通り、犯人の男が現場に現れるのだが……。
ネタバレ無し感想
※ここでは真犯人やクライマックスに関わるネタバレは控えていますが、ゲストキャラや物語の簡単な道筋に触れています。
まずは物語について
今回は事前に告知されていた情報の通り、高木&佐藤の恋愛模様と、警察学校組5人の2つの要素が描かれています。正直見る前は、かなりのコナンシリーズの中でもかなりの温度差があるこの2つの要素を果たして違和感なく混ぜることができるのか? と少し不安でした。
しかし蓋を開けてみれば、実に上手く融合させていました。高木&佐藤刑事の結婚についてはそれほど大きくはフィーチャーされず、しかし今回の事件に松田刑事が関わっているため必然的に佐藤刑事がメインで捜査。すると当然高木刑事の出番も増える。
一方、萩原・松田両名が殉職した事件の犯人が関わってくるため、こちらも必然的に降谷さんがかなり重要なポジションになってきます。
この2つの要素の絡ませ方がとても自然で違和感がなかったのが素晴らしかった。
また毎度のことながら、原作でまだ登場していない要素(今回で言えば、安室さんの正体が警察関係者にもバレてはいけないことなど)の落とし所が難しかったりしますが、そのあたりも見事に濁していました。原作に影響はなくまとめているものの、高木&佐藤刑事など警察関係者と降谷さんがニアミスしそうになるのはやっぱりハラハラドキドキワクワクしますね。
続いて警察学校組について
名探偵コナンのスピンオフ作品「名探偵コナン 警察学校編 Wild Police Story」とそのアニメ作品(不定期で放送中)に登場する降谷零、諸伏景光、松田陣平、萩原研二、伊達航の5人が今回初めて劇場版に揃って描かれました。とは言っても降谷さん以外全員が物語開始時には亡くなっているため、当然描かれるのは過去のお話。
今回の事件に松田刑事が関わってくることから、松田刑事が捜査一課に配属されていた一週間に何が起こっていたのかが主に描かれます。2003年に放送されたテレビスペシャル「揺れる警視庁 1200万人の人質」は今もなお根強い人気を誇る名作エピソードですが、その中でも描かれた松田刑事の行動を深掘りしこの一週間でこんなことが起きていたんじゃないかと膨らませていったのが本作なので、揺れる警視庁~が好きだった人にも間違いなく刺さる内容です。
また、萩原を除く4人が協力して事件解決に挑むシーンでは、4人それぞれの特技や特性を活かした活躍が描かれておりそれだけでも見る価値があるくらいかっこいい!
声優について
メインキャストについてはもはや語る必要もないくらい安定したお芝居だったので割愛させていただきまして、ゲストキャラクターについて少し。本作オリジナルキャラクターとして登場するのは元警視庁捜査一課の警視正で目暮警部の同期だった村中努(CV.三宅健太)、そのフィアンセでフランス人のクリスティーヌ・リシャール(CV.山口由里子)、物語の裏で暗躍する謎の女性エレニカ・ラブレンチエワ(CV.白石麻衣)、そして爆弾を操る正体不明の殺し屋・ブラーミャ。
毎回ゲスト声優が豪華な劇場版コナンですが、今回も三宅健太さんと山口由里子さんという実力派ベテラン声優が出演しています。かつては「鬼の村中」と恐れられた強面にも関わらず、今はフィアンセのエレニカにデレデレという村中さん中々にいいキャラをしていました。声高めでとても可愛らしい山口由里子さんのお芝居も新鮮で素敵。
そして近年はお約束になった芸能人枠のゲスト声優には女優の白石麻衣さん。観る前にチラッと噂でかなり上手かったと聞いていたんですが、確かにそれほど違和感なく馴染んでいて驚きました。特にエレニカというキャラはロシア人という設定もあり、作中かなりの頻度でロシア語を使用するんですがこれがまあ上手い。初の声優で聞き慣れないロシア語を用いてのお芝居は大変だったと思いますが、これまで登場した芸能人声優の中でもトップクラスに上手かったと思います。
ツッコミどころもそこそこある
高校生が小学生になって探偵業やってる時点でツッコミどころも何もないんですが、今回も中々にツッコミどころ満載で笑えました。もうコナン君隠す気ないんじゃない? ってレベルで捜査に参加しまくる。今までは盗聴器使って捜査会議を盗み聞きしたり、口が軽い高木刑事辺りから聞き出したりが多かったですが、今回はバリバリ最前線で捜査に参加してます。
また、本作では諸事情により降谷さんが捜査に参加できない状況に陥るのですが、彼自らコナン君を頼ってくるのも少し意外でした。ほとんどの場合、コナン君が自ら首突っ込みに行ってたけど。緋色シリーズ前後まではまだまだコナン君に対して敵でも味方でもないという姿勢だったように感じてましたが、すっかり信頼されていたようです。「ゼロの執行人」の時とはまた違う2人の関係性も面白かったですね。
今作は新しい「劇場版コナン」
総合的な感想としては新しいコナンが観られたなというところ。「劇場版コナン」は年々アクションが派手になっていって、小学生どころか大人でも無理やろみたいなものが多くて、正直ちょっと胸焼け感もありました。また安室さん、赤井さんなどの人気キャラを全面に押し出した作品も多かった中、今回は非常にバランスが良かった。
人気キャラである安室さんと警察学校同期組、高木&佐藤刑事、少年探偵団、そしてゲストキャラクターらの物語がバランスよく構成されていて、キャラ人気に頼らない骨太な物語があったように思います。
公式パンフレット内の制作スタッフらによるインタビューでも本作のテーマのひとつがチームワークであると語られており、実際それが見事に感じられる内容でした。
原作からの登場キャラクターは多いですが、それぞれの背景がきちんと語られますし初めて「名探偵コナン」に触れる人や原作・アニメをあまり観ない人でも入り込みやすいのではないかなと思います。
ちなみに今回の舞台は渋谷で、普段架空の街や建造物が多い「劇場版コナン」では珍しく、がっつり実在する建物などが登場します。しかもハロウィンの渋谷。実際に訪れたことのある人ならさらに楽しめるかもしれません。
関連リンク
関連商品
ネタバレあり感想
※ここからは真犯人や物語の根幹に関わる部分、次回予告について触れています。
面白かったんですが、なぜか見終わったあと多少の物足りなさを感じてなんでだろうなと考えたら、毎回ラストでコナン君が起こすあり得ないくらいの大活躍を求めていたからのようです。今回も真犯人確保後ラストに大惨事を防ぐためにコナン君が活躍しますが、コナン君一人というよりみんなで力を合わせて解決するんですよね。どうやらそれが物足りなく感じるくらい、今までが強烈過ぎたようです。
今回は主にアクションについてはコナン君より降谷さんが担当という感じでしたね。同期4人での活躍しかり、ラストの犯人確保しかり。なんでもできる有能な降谷さんだけど無鉄砲なところがあるからこそのダイナミックなアクション、めちゃくちゃかっこよかった。
本作で初めてコナンの監督を務めた満仲勧さんが好きなんですが、監督だけでなく絵コンテと原画にも参加されていたようでとても嬉しくなりました。原画はさすがに分からないものの、降谷さんの大ジャンプやヘリの中での戦闘は満仲監督の描いたコンテだったらいいなあ。大迫力でめちゃくちゃ興奮しました。ヘリの中で戦闘とか最高だな!
物語の中盤くらいで、そういえば今回犯人の候補になる2人しかいないよな~と気づいて、あのフィアンセのが怪しそうと思ってたら見事に当って笑いました。いや村中さんが気の毒過ぎて笑い事じゃないんですけど……。
コナンの犯人は大体声優が豪華というルール(?)で行くと、三宅健太さんも山口由里子さんもどっちもアリだよなあと中々絞れなかったのも声ヲタならではの楽しみ方だったかも。悪役声なのは三宅さんだけど、美女がめちゃ強で狂気的ってのが最高だったのでクリスティーヌで良かった。正体を現す前と後の山口さんの演技の変わり様も本当に素晴らしかったですね。いや~~~美しかった。
「ハロウィンの花嫁」っていうタイトルも、観る前は佐藤刑事のことかなと思っていたら、真犯人のことを指していたっていう伏線の張り方も最高でした。
観終わった直後は物足りなさはあったものの、じっくりと自分の中で噛み砕いて、主題歌の「クロノスタシス」の意味を知ってからはぐんぐん評価が上がっています。クロノスタシスって、目を素早く動かした後最初に見た映像が長く続いて見える現象のことらしく、時計の針が止まって見えたりする現象として知られているそうです。歌詞の中にも「秒針の止まった」「時計にも消せなかった」などのワードが出ていて、それを知ってようやく本作の本当のテーマを理解できました(遅い)
今回登場するキャラクターはみんな大切な誰かを亡くして苦しんでいる人たち。その過去からまだ踏み出せない人、その瞬間から時が止まっているように感じている人もいる中、止まって見えるだけで本当はちゃんと時間は進んでいる。自分もちゃんと成長し前に進めている。そんなテーマをこの主題歌から感じられました。
揺れる警視庁~で松田刑事や高木刑事が言っていた「忘れなくてもいい。忘れちゃったらその人は本当に死んでしまうから」というセリフも生きてくる深いテーマですね。
ところで今回劇場版コナンとしては珍しく、蘭ちゃんがほぼ本筋に関わってこないんですよね。メモの中身を偶然見ていたことはコナン君にヒントを与えましたが、ラスト命の危機に関わらなかったのは珍しいなあと。毎回最後死にそうになってますからね蘭姉ちゃん笑。
小五郎のおっちゃんも、哀ちゃんを捨て身で守るという超かっこいい見せ場はあったもののそのせいで序盤に離脱してしまったのがちょっと寂しかった。そろそろ毛利親娘が無双する話とかも見たいな~。
次回予告について
毎回(下手したら)映画本編の内容よりも気になる次回予告。これを観るまでが劇場版コナン。最近はもう誰のセリフかで次回のメインキャラが分かるようになってますが、次回はなんと……あの人!!! うわーマジか!!
安室・赤井、平次、降谷、真さん、赤井家、警察学校組&高木佐藤もりもりと来て次回組織は強すぎる。もう人気キャラ出さないと前回の興行収入超えられないみたいになっちゃってる。
とはいえ純黒ぶりの組織は楽しみしかないですね! なんだかんだ組織が出る回が一番緊迫感あって好きなのでもう今から次回が楽しみです。
↓Amazonプライム会員なら月額600円でAmazonプライムビデオ見放題や無料の配送特典などお得なサービスを受けられます。他にも多数のサービスを利用できるのでオススメです!
コメント