あらすじ
世界中に愛される歌姫・ウタ(CV.名塚佳織/Ado)。素性を隠していた彼女が初めてファンの前で巨大なライブを開催することになり、麦わらの一味もその会場がある音楽の島・エレジアへと足を運んでいた。「世界を歌で幸せにしたい」と願うウタの歌声によってライブが始まり会場が盛り上がる中、突然ルフィがステージへと上がりウタのことを「シャンクスの娘」と明かし、かつて故郷のフーシャ村で仲良くしていた幼馴染であることが判明する。
再会を喜ぶウタとルフィをよそに、世界では「シャンクスの娘」であるウタを狙う海賊や彼女の力を危険視する世界政府や海軍が動き出そうとしていた。
ネタバレ無し感想
※ここではクライマックスや物語の根幹に関わるネタバレは控えていますが、ゲストキャラや物語の簡単な道筋に触れています。
まずは物語について
公開初日から「ワンピースの映画で1番」という声と「これはワンピースなのか?」という戸惑いの声で混沌としていたSNS上でのファンの感想。実際に劇場へ観に行ってそのどちらの気持ちもよく分かりました。間違いなく本作はこれまでにない全く新しい「ONE PIECE」の世界観だと思います。
まず映画が始まって真っ先に驚くポイントは(特に前半)かなりの割合をウタの歌が占めているということ。ウタの歌から映画が始まってその後もストーリーとライブが交互に繰り返されるような演出なので、映画を観に来ているのかウタ(Adoさん)のライブを観に来ているのか分からなくなる感覚にも陥りました。特に序盤に関しては、これ本当にワンピなのか? と戸惑ったのも事実。
ただストーリーが進行するのと同時に、なぜウタが歌うのか、なぜここまで歌の割合が多いのかというのがウタの能力が明かされるのと同時に理解できていくので、その頃にはすっかり戸惑いも消えていました。
また「これはワンピースなのか?」という戸惑いを抱くもう一つの理由が、麦わらの一味よりもウタとシャンクスの関係性が全面に出ているからというのがあります。今回ルフィ以外の一味の出番は控えめで一人一人の見せ場も歴代に比べれば少ないかなという印象。あくまでもこの映画はウタとシャンクスがメインと感じられました。
音楽について
まずウタのキャストをボイスとボーカルで分けたのが大正解。この「FILM RED」は作中何度も繰り返されるように「新時代」がテーマで、令和の歌姫とも呼ばれるAdoさんを起用したのは天才的と言わざるを得ません。むしろ他に適役はいなかったと思います。
今回使用される楽曲は全部で7曲あるのですがそれぞれ手掛けたアーティストが違うため楽曲のテイストやジャンルもバラバラ。それらを圧倒的歌唱力で、使用される場面ごとに歌い分けもできる唯一無二のボーカリストがAdoさんだったんだなと。正直Adoさんのライブだと思って観に行くのも全然アリだと思う。
またストーリーの内容に沿って楽曲が作られているのでストーリーと各楽曲の歌詞のシンクロ率もすごい。これだけ著名なアーティストを集められるのもONE PIECEという巨大コンテンツならではですね。
声優について
今回映画オリジナルキャラクターは意外と少なくてウタとゴードンの2人だけ(一応他にもゲストキャラが登場しますが出番はかなり少ない)。
ウタを演じるのは名塚佳織さん。正直なところAdoさんと名塚さんではだいぶ声の方向性が違うのでは……と不安だったんですが実際に観てみたら驚くほど違和感ありませんでした。名塚さんといえば声が華奢で可憐なイメージだったのが、ウタの天真爛漫さだったり気の強さに声が全く負けていなくてかなりのはまり役。叫んだ時の迫力もAdoさんに負けず劣らず。先ほども言ったようにボイスとボーカルを別々にキャスティングしてくださって感謝しかない。
謎の男ゴードンは津田健次郎さんが担当。最近は顔出しでのお仕事も増えてすっかり世間にイケメン声優なのが認知されてしまったツダケンさんですが、本作ではイケボよりも深みのあるお芝居を全面に押し出していた印象。
ちなみにほかの出演者で有名どころだとウタのライブに来ていた少年ヨルエカ役に梶裕貴さん、あとは芸能人枠として俳優の山田裕貴さんとお笑い芸人の霜降り明星がゲスト声優として出演していました。下手なゲスト声優のせいで雰囲気ぶち壊しにされることもありますが、今回に関しては良くも悪くもキャラそのものの影が薄くて全然気づかなかった笑。
特に良かったポイント
個人的に一番感動したのは圧倒的な作画。何よりもウタのライブシーンで、歌って踊るウタをほぼ手描きで見せてくれたのが本当に感動しました。アニメでの歌唱やダンスのシーンって最近はフル3DCGのことが多いんですが、今作では引きのカットではCGを使いつつそれ以外ではCGかと見紛うくらいぬるぬるに動きまくります。これだけで感動できるし、それだけで観るだけの価値があると思います。
バトルももちろん大迫力。動きに動きまくってもはや目では追えないレベル。ぬるぬる動く作画が好きな人は見て損はないと思います。
もうひとつ良かった点は登場キャラクターをかなり絞っているところ。長編アニメのオリジナル映画って原作の人気キャラを詰め込みすぎてそれぞれの見せ場が減ってごちゃごちゃしてしまうというのが個人的に嫌いなんですが、今回はかなりキャラを絞ってます。ネタバレのない範囲で言うとローとベポ、バルトロメオ、コビーとヘルメッポ、ブルーノ、ビッグ・マム海賊団のオーブンとブリュレ、そして赤髪海賊団が主要キャラといった感じ。ほかにも海軍や五老星、さらにはサイファーポールなんかも登場してかなり豪華。
音響について
今回観に行った劇場が少し小さめのところで座席が後ろの方だったからかもしれないんですが、音響にちょっと違和感を覚えました。具体的に言うと、BGMとSEの音が大きくてセリフが聞き取りづらかった。特に序盤は巨大なライブ会場が舞台ということで、常に観客の歓声が響いている状態ということもありそれにかき消されて声が聞こえづらかったですね。演出なのは分かるけどほぼ聞き取れないセリフもあったのでさすがにいかがなものかと。ただ音の聞こえ方は劇場と座席の位置によって結構変わると思うのであくまでも一個人の感想です。
これから観に行くという方は世界観に浸りたいなら後ろの方、セリフをしっかり聞きたいなら前の方の座席を選ぶといいかもしれません。
シャンクスが好きなら観た方がいい
これに尽きます。観に行くか迷ってる人に声を大にして言いたいのは、「シャンクスが戦ってる姿を見たいなら絶対観に行くべき」ということ。シャンクスと言ったら原作で一コマ登場するだけでもファンの間で大騒ぎになるほどのレアキャラなのに、それが今回はシャンクスどころか赤髪海賊団が総出でめちゃくちゃ戦います。尾田っちが総合プロデューサーだからこそなせる業ですね。
ちなみに今回は原作の伏線になりそうなシーンはそれほどなかったかなという印象ですが、原作コミックスを読んでいる方なら「おっ」と思えるシーンが少しだけありました。
※この先ではネタバレありの感想を載せています。閲覧は自己責任でお願いします。
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ネタバレあり感想
※ここからは物語の根幹に関わる部分や第1弾入場者特典の「四十億巻」について触れています。
ウタについて
映画を観るまで「本当にシャンクスに娘がいるのか?(いていいのか?)」というのが引っかかって仕方なかったんですが、やはりというかなんというか血のつながりはなかったことになぜかホッとしました。ルフィの幼馴染という設定も過去捏造があんまり好きではないのでどうかなあとは思ったものの、原作でもサボの存在が明らかになったのはだいぶ後だったしまあアリなのかなと。
実際に映画を観てみたらかなり狂気的でイカレたウタの表情もたくさん見られて、かなり好みドンピシャでした。めちゃくちゃ可愛い。狂気的な可愛い女の子って可愛いよね。
全体的に意外なキャラが活躍
まず何よりもブルーノの登場に一番びっくりしました。驚きすぎて思わず前のめりになったくらい。ブルーノを見てもルフィがあんまりびっくりしてなかったのでそれどころじゃなかったからなんだろうか。コビメッポとブルーノが一緒に行動してたのが今回一番の驚きだったかもしれない。しかもあのブルーノがあんな可愛い姿になるとは……。
可愛い姿と言えばベポはともかく、まさかのサニー号がチョッパーみたいなマスコットキャラになったのもびっくり。可愛い以外はほぼ戦力にはなってなかったので単純にファンへのサービスだったのかなと思うんですが、めちゃくちゃ可愛かったので出てくるたびににやけました。何気にメリー号と同じく桑島法子さんが声を演じていたのもにこにこポイント。メリー号と魂は同じだったりするんだろうか。
あとはナミやロビンと並んでブリュレがヒロイン並みに可愛かったですね。サンジとのくだりとか今回かなり優遇されてた気がします。
そういえばゴードンは絶対裏切るか黒幕だろうなあ(ツダケンさんだし)と思っていたらまさかのガチでただのいい人で逆の意味で裏切られました。ここまで悪が存在しないワンピも珍しい。
全体的に最終章を意識してる?
これまで映画には登場したことのないシャンクスと赤髪海賊団の活躍、そして五老星やサイファーポールの登場からしてやはり最終章を意識しているのかなという印象でした。まず間違いなく最終章で活躍するだろうなという面々です。特にシャンクスと赤髪海賊団については原作でもほぼ謎に包まれている状態で、尾田っちでなければここまで描けなかったはず。もしかしたら原作に先駆けての要素もあったかもしれないですね。
赤髪海賊団がここまでがっつり戦闘に参加するのもおそらく初めてだろうし、ルフィとシャンクス、ウソップとヤソップの(疑似)共闘とか今後原作でもあるか分からない貴重な戦いが見れたのも嬉しかったです。尾田っちのことだからREDで描いたことは原作ではやらなそうですけどね。
第1弾入場者特典「四十億巻」について
基本的には尾田っちによるルフィや登場キャラたちの描きおろし設定画がメイン。見どころは尾田っち描きおろしのウタの半生(がっつり映画のネタバレになっているので視聴後に読むのがオススメ)。「FILM RED」に込めた思いや各楽曲のテーマなどかなり読み応えあります。個人的にはウタの最期についてが文字ではっきりと記されていたのでちょっとウッとなりました。ウタがどうなったのかってルフィは知ってるんでしょうか……。
しかし何よりの衝撃はラスト2Pの尾田っち描きおろしのネームで描かれたシャンクスとロジャーの出会いについてです。映画の中でも一瞬それを示唆するシーンがあったのはこういうことだったのかと。いろいろ繋がって大満足な四十億巻でした。
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