9話のあらすじ
奉公人たちとの乱闘で殴られ気を失ったトルフィンは穏やかな風景の中で目覚める。全てが夢だったと思い込んだトルフィンは平和なひと時を過ごすが、そこへ現れた父・トールズに「何人殺した?」と問われ自らの犯した罪を思い出す。暗い崖底へと突き落とされたトルフィンは地獄のようなおぞましい世界で、アシェラッドとの再会を果たす……。
9話の感想
おそらく「ヴィンランド・サガ」第2期最大の見せ場にして、原作者・幸村先生が描きたかったテーマの一つだったのではないでしょうか。
第1期ではただただ復讐に生き考えることを放棄しながら突き進み続けたトルフィン。しかし生きる目的を失い奴隷となったことで初めて、自分の目的のために罪も恨みもない人々の命を多く奪ってきた自身の罪に気づきました。
それが悪夢となって襲い掛かる夜を何度も繰り返す中、奉公人との乱闘の中で気を失ったトルフィンは三度夢の中へ。そこに現れたのは父・トールズと仇敵・アシェラッド。
夢の始め、トルフィンが目を覚ましたのは穏やかな風景。争いも恐怖もない世界。この時トルフィンはトールズの死もアシェラッドとの出会いも奴隷になったことも、何もかもが長い夢だったと思い込んでいました。
この時のトルフィン役上村祐翔さんのお芝居がまずすごい。外見は成長した青年トルフィンなのに声はとても幼くなっていて、まるでアイスランドにいた頃のような幼さ。でも幼少期のトルフィンは石上静香さんが演じていたので、上村くんがこのようなトルフィンを演じるのは初めてのことなんですよね。それなのにまるで違和感がない。もしトルフィンがずっとアイスランドであの生意気な少年のまま育っていたらきっとこんな声だったんだろうなっていうのをそのまま演じたような声。驚きました。
その後トールズが現れ平和な空気が一変。「その剣で何人殺した?」と問われたトルフィンはようやくあの長い夢は夢ではなく現実だったと気づき、自ら犯した罪も思い出します。
ここで上村くんの声がまたいつもの青年トルフィンに戻るのですが、その変化ぶりがやっぱりすごい。
大地が裂け暗い崖の下へと落ちていくトルフィンの恐怖の悲鳴はそれこそ夢に出てきそうなほど強烈。
崖の下には真っ赤な水の中、亡者たちがお互いを残酷に殺し合いながら笑っているという地獄のような光景が。その中にはビョルンの姿も。そしてそんな地獄を1人高見から見下ろしているアシェラッド。
第2期に入って(第1期最終回の死後)初めて登場したアシェラッドは相変わらず皮肉めいた口調ながら、暴力の世界から抜け出そうともがいているトルフィンの背中を押す重要なキャラクターとなりました。
このアシェラッドはあくまでもトルフィンの夢の中に現れただけであって、実際にアシェラッドが言っているわけではないんですよね。トルフィンは長年アシェラッドを憎み恨み、おそらく彼の本質を見ようともしなかった。でも今夢の中に現れたアシェラッドは口は悪いながらもトルフィンにとって救世主ともなりました。
アシェラッドが死の間際に残した「本当の戦士になれ」という言葉は想像以上にトルフィンの心に残っていたんですね。アシェラッドのせいでトルフィンはこうなってしまったわけだけども、救いになったのもやっぱりアシェラッドだった。上手く言えないけれど……うん。
トールズの「敵なんて1人もいない」「本当の戦士」というセリフが今になってグサグサ刺さるのが物語がとても上手いなあとも感じました。トルフィンは結局文字通り地獄に落ちるまでその言葉の真意に気づくことはできなかったけれど、トールズもかつてはヴァイキングとして多くの人々を殺しようやく「本当の戦士」に気づいたはずなので、身をもって体感しなければ人は変わらないという教訓のようにも感じますね。
地獄から這い上がりもう人を傷つけないと誓ったトルフィン。一方でクヌートは自ら地獄に向かっているようにも思えます。クヌートは果たしてここからどんな道を歩んでいくのか……。
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※本ページの情報は2023年1月時点のものです。
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