【アニメ感想】ゴールデンカムイ（第四期） 第四十四話 「ヒグマ男」

44話のあらすじ

無事に北海道に帰って来た杉元一行は世話になっていたアイヌのコタンから程近い雨竜川で、砂金で1日50円稼いだことがあるという男の話を聞く。その付近に現れるウェンカムイの退治も頼まれていると聞いた一行は路銀を稼ぐため雨竜川へと向かう。そこで砂金掘り師の松田平太（CV.石田彰）という男と出会うが……。

44話の感想

アニメ化したら見たいエピソードNo.1だったのがこの平太師匠回！（個人の意見です）
まるでミステリ作品のような上質な叙述トリックとサイコホラーが見られる名作エピソードです。

当面の路銀を稼ぐため雨竜川に現れるウェンカムイの退治と、1日50円稼ぐという砂金掘り師に会いにいくことになった杉元一行。
雨竜川へ行くと崖から落ちそうになっていた砂金掘り師の松田平太という男を助けたことによって、彼から砂金の掘り方を学ぶことに。実はこの平太こそが1日50円稼いだという砂金掘り師。
杉元と白石は彼を「平太師匠」と呼び慕い、彼と彼の家族から砂金掘りのコツを色々と教えてもらいます。

砂金掘りに一攫千金の夢を見る杉元と白石に対して呆れた表情のアシㇼパさん。
そんな中、平太師匠が「ウェンカムイがいる」と怯えた表情を見せます。彼は確かにウェンカムイ――つまりヒグマがいるのを見たと言いますが、アシㇼパさんたちが調べても足跡すら見つからない。それでもヒグマに恐怖を抱く平太師匠の表情には鬼気迫るものがあり、とても嘘を吐いているようには見えません。

一方、杉元たちが砂金掘りに熱中している間、鳥をスケッチして時間を潰していた頭巾ちゃんことヴァシリ。そんな彼に近づいてきたのは平太の姉・ノリ子。彼女はヴァシリに自分の裸を描いてほしいと頼み、彼女の裸を見たヴァシリは興奮したように筆を走らせます。

杉元たちがヒグマを見つけられない中、次々とヒグマに親兄弟を殺されパニックに陥る平太師匠。しかしそのことを聞いた杉元は困惑します。

なぜなら、最初から平太師匠には家族などいなかったから。
平太師匠が会話していた親兄弟は全て幻。平太師匠の家族と杉元たちが会話しているように思えるシーンもありますが、よーく見ると会話が繋がっていないのが分かります。
またヴァシリを誘ったノリ子も実は平太師匠そのもの。彼がスケッチした絵には全裸の平太師匠が描かれ、さらにその肌には例の刺青が。ヴァシリが興奮していたのは裸ではなく刺青だったんですね。
この辺りの叙述トリックは初めて原作で読んだ時本当に驚かされました。あまりにも良くできている。
そしてもちろん、平太師匠が怯えるヒグマも存在しません。というより平太師匠そのものがウェンカムイだったというオチ。

幼い頃にウェンカムイの話を聞いた平太師匠はあまりの恐ろしさにいつも空想していたとか。大人になって家族で砂金を掘るようになり、その日取った砂金をその日のうちに散在してしまう欲深い家族を罰してほしくて、ヒグマの食べ残しを家に持ち帰り間接的に家族を殺害。そのヒグマはアイヌによって殺され山でバラバラに。
それ以来平太師匠の中には家族それぞれの人格とヒグマが生まれ（多重人格）やがて彼自身がヒグマになってしまうという恐ろしい精神障害を患うように。空想の中では家族を殺し、現実でも人を殺してしまうようになったため網走監獄に収監されていたようです。

サイコホラーとしても超傑作ですが、ウェンカムイの妄想に憑りつかれ、最後には自ら仕掛けた毒矢で自らを殺しウェンカムイを終わらせるという最期がまた切なくも綺麗な終わり方で大好きなエピソードです。
また平太師匠はアイヌの文化であるウェンカムイについて中途半端に聞きかじった結果悲劇を起こしてしまいましたが、それについてアシㇼパさんが放った「正しく伝えることは大切だ」という教訓が胸に刺さります。砂金によって人生が狂ってしまった平太師匠一家を、金塊争奪戦に上手く絡めているのもあまりにも上手い。

そして！ そんな平太師匠を演じたのが石田彰さんだったわけですが、最高でしたね……！？
平太師匠は普段の姿と、家族の人格になった時とウェンカムイに憑りつかれた時の人格と、全部6人分くらいの人格がありかなりの難役。アニメでは家族4人については別々に声優が起用されていたものの、真実が明らかになるシーンでは全員分を石田さんが演じていました。ウェンカムイに憑りつかれた時の豹変ぶりと言い、この辺りの繊細で狂気的なお芝居は石田さんだからこその気迫がありましたね。
石田さんの声で平太師匠回を見られるなんて……最高……ありがとう……。

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第四十四話　ヒグマ男

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