【アニメ感想】ゴールデンカムイ（第四期）第四十六話「完璧な母」

アニメ

2023.06.06

46話のあらすじ

アシㇼパを連れ戻せという鶴見中尉の命令に背き、インカラマッと生まれてくる子のそばにいることを決意した谷垣。彼女が入院している病院を突き止め、2人はついに再会を果たす。
しかしそこへ見張り役の月島が現れ2人に銃口を向ける。窮地に陥った2人を助けたのは……。

46話の感想

冒頭、久々登場の二階堂。義手を隠して勝手に羊羹を詰める鯉登少尉のくだりが意味不明すぎて最高に面白いのでカットせずアニメ化してくれて感謝しかない……。
すっかりお腹の大きくなったインカラマッは同じ病院で過ごすうちに二階堂や家永さんとも仲良くなったようで、特に二階堂と鯉登少尉は彼女の占いをかなり信じている様子。
逆にただ一人虚ろな瞳の月島軍曹。この第46話は谷垣とインカラマッの物語と見せかけて、実際は鯉登少尉と月島軍曹の物語でもあります。この2組を同時進行に描いていく脚本の上手さが素晴らしい。

鶴見中尉からアシㇼパを連れ戻せと命令を受けていた谷垣はしかし、アシㇼパを無事に連れて帰るというフチとの約束と、愛するインカラマッとそのこどもの命、どちらを取るか究極の選択を迫られます。
しかしどちらも裏切ることはできず、ついにインカラマッとともに逃げることを選択。彼女が入院している病院を突き止め、再会を果たした2人ですがそこへ現れたのは見張り役の月島。この回の月島はとにかくずっと目が死んでいて怖い……。

窮地に陥った2人を助けたのは意外にも家永カノ。元々は凶悪な囚人であった家永ですが、実は彼女が追い求めていた究極の姿とは母そのもの。
身籠ってお腹の膨らんだ母の姿が完璧に見えていたという家永。赤ん坊を抱く姿は聖母そのもの……だと思っていたのに階段で足を滑らせて流産してしまった母。家永はそんな完璧な母の姿をインカラマッに重ねていたようです。
インカラマッが完璧になる瞬間を見届けたいと月島を止めようとするも返り討ちに遭い撃たれた家永は、結局またしても完璧な母の姿を見ることはできませんでした。
自分では子を産めないからこその憧れ、羨望。それが殺人鬼へと駆り立てたのかと思うと……。
実は準レギュラーの中ではキロランケに続いて二人目の死者となってしまった家永。地味に好きなキャラだったので原作読んだ時はショックでした。いやもうみんな好きなので誰が死んでもショックなんですけども……。

家永のおかげでひとまず月島の手から逃れられた谷垣とインカラマッ。同じ病院にいた鯉登少尉は一度は2人に銃を向けるも、葛藤の末逃がすことを決意します。ここから鯉登少尉の成長が著しい。
馬に乗って逃げる谷垣、しかし今にも生まれそうなインカラマッに無理させることができず休み休み森の中を進む間にもまだ追ってくる月島。家永に2時間は動けない薬を打たれたにも関わらず執念で負ってくる月島、完全にホラー。初期は第七師団で唯一の良心と思っていた頃が懐かしい……。実は鶴見中尉と同じくらい狂ってるんですよね。狂わされてしまっただけだけど。

しかしこの作品の面白いところは樺太では協力し合う仲間同士だった谷垣と月島が、北海道に戻って来た途端に殺し合い、インカラマッの破水が始まっていざこどもが生まれそうとなったらまた協力し合う（？）というこの情緒のジェットコースター。ついさっきまで殺し合っていた2人が、出産のために女たちにこき使われるシチュエーション面白すぎる。
谷垣はアシㇼパを連れ戻すという約束こそ果たせなかったものの、久々にフチとも再会できて嬉しかったでしょうね。あとフチが実は百戦錬磨の産婆だったというのも良くできてて感動。

家永は命を落としてしまったものの、インカラマッは無事に元気な女の子を出産し、谷垣共々鶴見中尉の手の届かない場所へと旅立ち。
月島は「鶴見中尉と月島軍曹を最後まで見届ける覚悟」という鯉登少尉の言葉によって、ようやく鶴見中尉の洗脳が少し解けた状態に。たくさんの命を殺し過ぎてしまった月島の「私にはもう遅い」という言葉に対して、鯉登少尉のまっすぐな「まだ遅くない」が刺さります。
ただのボンボンだった鯉登少尉がどんどん立派な軍人さんに……。
原作を初めて読んだ時は谷垣か月島かどっちか死ぬんじゃないかとハラハラしていたので、ひとまずハッピーエンドで本当にホッとしました。鯉登・月島はまだまだここから大変ではありますが。

この第46話は珍しくほぼ原作通りでカットされたシーンもほとんどありませんでした。それ故に素晴らしく出来の良い回だったと思います。
またアニメで見るとより谷垣ニシパのかっこよさが際立ちますね。あの頼もしさと優しさはインカラマッが惚れるのも分かる。幸せになってほしい。