アニメアニメレビュー

【アニメレビュー】本当の怪物は誰だったのか?脚本、作画、声優、全てが完璧な超大作サスペンス「MONSTER」

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少し懐かしいアニメをレビューするこのシリーズ。あまり知られていない隠れた名作や、最近アニメを見始めた人にもぜひ見てほしいオススメアニメなどを取り上げていく予定です♪

ちなみに前回の記事はこちら↓

そして今回レビューするのは2004年に放送されたTVアニメ「MONSTER」です。

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MONSTER

原作:浦沢直樹「YAWARA!」「20世紀少年」
監督:小島正幸「メイドインアビス」
シリーズ構成:浦畑達彦「咲‐Saki-」
キャラデザ:藤田しげる「ピアノの森」
音楽:蓜島邦明「世にも奇妙な物語」
アニメ制作:マッドハウス「葬送のフリーレン」「チ。―地球の運動について―」

放送期間:2004年4月7日-2005年9月28日
話数:全74話
ジャンル:サスペンス

MONSTER」は1994年から2001年までビッグコミックオリジナルで連載されていた浦沢直樹さんの漫画が原作のTVアニメです。

深夜アニメとしては珍しく連続6クール(全74話)放送され、原作をほぼ忠実にアニメ化されました。

安定したクオリティに定評があるマッドハウスがアニメーションを手掛けたこともあり、原作をそのままアニメにしたようなキャラデザと74話一切崩れることのない作画は奇跡的。

原作に忠実な見応えのあるストーリー、重厚な音楽、今では考えられない豪華すぎる声優など一アニメ作品としての完成度が非常に高い名作です。

あらすじ

結末や物語の根幹に関わる部分については触れていませんが、多少のネタバレを含みます。

1986年、西ドイツ。デュッセルドルフのアイスラー記念病院に勤める日本人脳外科医Dr.テンマはその天才的な技術から「天才」と称され、院長のハイネマンにも気に入られていた。

院長の娘エヴァと婚約し、ゆくゆくは外科部長から院長という出世コースに乗り順風満帆な生活を送る一方で、患者よりも権力にこだわるハイネマン父娘への違和感を抱き、医者としてのジレンマを抱えていた。

そんなある日、東ドイツから亡命してきたリーベルト夫妻が殺害される事件が発生。頭部を銃で撃たれた双子の兄ヨハンとショックで茫然自失の妹アンナが搬送されてくる。

テンマはハイネマン院長から倒れた市長の手術をするよう命じられるが、それを無視してヨハンの手術を執刀。結果的にヨハンは助かり市長は亡くなってしまう。

院長の怒りを買ったテンマは出世の道を閉ざされ、エヴァとの婚約も破棄。順調だった医者人生は一気にどん底へと転落してしまう。

ところがテンマを冷遇していたハイネマン院長と二人の外科部長が何者かに毒殺される事件が起こり、さらに入院していたヨハンとアンナが病院から失踪。

テンマはドイツ連邦捜査局のルンゲ警部から疑いの目を向けられるが、事件は迷宮入りとなり未解決のまま9年が経過。

外科部長となったテンマは連続中年夫婦殺人事件の重要参考人ユンケルスの手術を担当。彼は「モンスターが来る……」と恐怖し、病院から逃げ出してしまう。

彼を追った先でテンマは美しい青年となったヨハンと再会するが、彼は躊躇なくユンケルスを射殺しさらには過去の殺人も告白し――。

90年代ドイツが舞台の逃亡劇

本作の舞台は1980年代~1990年代のドイツとチェコスロバキア。一部を除き実在する街が舞台となっていて、ドイツの美しい街並みが楽しめるのも魅力のひとつ。

時代背景も重要な要素となっており、東西ドイツやベルリンの壁崩壊以前と以後、東西冷戦などこの時代のドイツについて最低限の知識があるとより楽しめます。

物語は若き天才脳外科医のDr.テンマが頭部を撃たれた少年ヨハンを救ったところから始まります。

院長と外科部長らが毒殺された殺人事件の容疑者として指名手配されたテンマは警察に追われながら、失踪した謎の青年ヨハンを追ってドイツ全土を渡り歩くことになります。

誰一人味方のいない異国で、誰が敵かも分からない疑心暗鬼の中での逃亡劇。さらに追手は警察だけでなく、ヨハンを取り巻く様々な組織や刺客たち。

陰鬱としたハラハラドキドキさせられるサスペンスが好きな人には絶対見てほしい超大作です。

4人の主人公

主人公はDr.テンマですが、エピソードごとに様々な人物の視点から物語は展開していきます。中でも主人公格と言えるほど重要な人物はこの4人。

Dr.テンマ

本作の主人公。本名は天馬賢三。多くのエピソードは彼の視点から描かれます。

若き天才脳外科医の日本人で、心優しく誠実。第1話の時点ではアイスラー記念病院に勤務し、ハイネマン院長からも気に入られ娘のエヴァと婚約していました。

しかし患者よりも権力を優先する彼らの考え方に疑問を抱き、ハイネマン院長の命令を無視して頭を撃たれた幼い少年の手術をした結果、築いてきた地位も信頼もそして愛する婚約者も失ってしまいます。

テンマは権力に固執し自分を冷遇するハイネマンや外科部長らに怒りを抱き「死んでしまえばいい」と独り言をこぼしますが、後日彼らは本当に死亡してしまいます。

実はテンマの独り言を唯一聴いていた少年ヨハンが院長らを殺害していたのです。そのことを知ったテンマは自分のせいでヨハンが殺人を犯し院長らの命を奪い、また婚約者エヴァの人生を壊してしまった罪に苛まれることに。

これ以降テンマはハイネマン院長ら殺害の容疑をかけられ追われる身となりながら、「怪物」となったヨハンを自らの手で殺すためにドイツ各地を放浪することになります。

テンマとヨハンの関係は複雑怪奇です。テンマにとって搬送されてきた重傷の少年ヨハンは、医者としての本分を思い出させてくれた存在。しかしその一方、命を取り留めたヨハンは「怪物」となって罪のない人の命を次々と奪っていきます。

けれどどこまで行ってもテンマは医者で、旅の道中に出会う怪我人や病人を決して見捨てることはできません。たとえそれが殺人犯であっても。自分の身に危険が迫っていたとしても彼らを見殺しにすることはなく、またどんな悪人であっても殺さない(殺せない)。

そんな彼だからこそ、最初は誰一人味方がいない孤独な逃亡劇だったのが、ほんの少しずつ理解者を得てそれが彼の潔白とヨハンの存在を証明していく。

ヨハンが恐怖で他者を支配するのに対しテンマは信頼で仲間を増やしていく、本作のテーマを体現しているような主人公です。

ニナ・フォルトナー/アンナ・リーベルト

本作のヒロイン。ヨハンの双子の妹で、彼と同じく美しい顔立ちの女子大生。

幼少時の記憶がなくニナ・フォルトナーとして養父母のもとで暮らしていましたが、20歳の誕生日に起きたとある事件をきっかけに自分がアンナ・リーベルトであることを思い出しました。

テンマにとっては最初の味方であり、彼に殺人を犯させないために自分の手でヨハンを殺すことを決意。テンマとはまた別にヨハンの痕跡を追うことに。

第1話で起きたリーベルト夫妻殺害事件のショックで記憶を失っていましたが、ヨハンの起こした殺人やヨハンを知る人物と出会う過程で少しずつ過去の記憶を取り戻していき、それがヨハンの正体を知るための重要な証言となっていきます。

見分けがつかないほどそっくりだった双子の兄妹がなぜ片や人の心を持たない殺人鬼に、片や心優しき少女になったのか。その真相が明らかになるのは物語終盤ですが、あっと驚く仕掛けが隠されていました。

エヴァ・ハイネマン

アイスラー記念病院の院長ハイネマンの娘で、物語開始時点ではテンマの婚約者だった女性。

甘やかされて育ったためか人一倍ワガママで高飛車、感情の起伏が激しく特に序盤はヒステリックな一面が目立ちます。

テンマがハイネマン院長の命令を無視して手術したことがきっかけで婚約を解消、さらには父が殺害されたことでテンマとはまた別の意味で全てを失ってしまいます。

それ以来、自分の人生をめちゃくちゃにしたとしてテンマに激しい憎悪を向けるようになり、アルコール依存症に陥りどんどん落ちぶれていくことに……。

初期はとにかく彼女の言動にイライラさせられますが、テンマへの憎しみの隙間から見え隠れする未練の匂わせ方が絶妙で、女心の生々しさを容赦なく描いているのがすごい。

またテンマの無実を証明できるほぼ唯一の人物でありながら、彼への愛憎が事件をより複雑化させてしまう展開がもどかしさを生み出しているのも面白い。

彼女がテンマへの執着をどのように終わらせるのか、アルコール依存症からどう立ち直っていくのかも見どころのひとつ。

ハインリッヒ・ルンゲ

ドイツ連邦捜査局BKAの警部。見た目は悪人面ながらBKAきっての敏腕刑事。

右手でキーボードを打つ仕草をすることで一言一句違わず頭の中のコンピュータにデータを保存・取り出すことができる、驚異的な記憶力の持ち主。

しかしあまりにも冷徹で容疑者を追い詰める捜査方法は警察内でも問題視され、とある事件がきっかけで警察署内での地位を失ってしまいます。

さらには妻と娘にも愛想を尽かされ完全な孤独になった彼は、アイスラー記念病院での一連の事件をテンマの仕業だと決めつけ、エヴァと同じく歪んだ執着心を持つように……。

数々の殺人に関わっていながらその痕跡をほとんど残さないヨハンをルンゲ警部はテンマの頭の中にしか存在していない架空の人物――つまり二重人格なのではと結論付け、これがまた事件をより複雑化させてしまいます。

テンマにとってはものすごく厄介な天敵とも言える存在ですが、その一方で犯人の気持ちになりきって犯行を予想する捜査方法はかなり面白く、テンマやニナとは全く違う側面から次第に真実へと近づいていくのが秀逸。

中盤まではルンゲ警部が出てくる度に胃痛になりそうでしたが、終盤の活躍ぶりには思わず胸が熱くなりました。

リアルで生々しい登場人物たち

この4人以外にも敵味方問わず数多くの人間味あふれる個性的な人物たちが登場します。1話のみの短い登場の人物もいれば、物語の展開を大きく左右する重要な人物も様々。しかし彼らに共通するのは圧倒的な生々しさ。

たとえば第6話に登場するマウラーさんは、9年前の新聞記事を探しに訪れたテンマと出会い成り行きで協力することになる新聞記者。最初はテンマを邪険に扱っていたものの、彼の必死さに協力的になっていきます。

仕事を優先し家庭を疎かにした結果、妻と娘に家を出ていかれてしまい、ヘビースモーカーをテンマに注意される。そんな一見本筋には関係ないやり取りからマウラーさんの人生や人となりまで見えてくるのです。

射殺した女性の子どもを養女として育てる元傭兵の男、ささいなことがきっかけで人を殺せなくなった元殺し屋の男、殺人を犯した息子に会うためドイツへやってきたイギリス人老夫婦、連続殺人犯の少年を射殺してしまいアルコール依存症になった元刑事の探偵……。

彼らの人生は物語の根幹には関わっていないのに、彼らの人生が物語に奥行きを生み出し、そしてまた人間という存在をあらゆる角度から映し出す。どのエピソードも考えさせられるものばかり。

それにしてもほんの数行でその人の人生が見えてくる浦沢直樹さんの台詞回しには脱帽です。

豪華声優陣による重厚な芝居

全74話の群像劇ということもあって本作の登場人物はかなりの人数ですが、端役も含めて(当時の)若手~大御所まで豪華声優が出演しています。

リアリティのある作品だからか吹き替え声優も多く起用されているのが特徴的。物語に深みを与える重厚なお芝居を楽しめました。

まずはDr.テンマを演じた主演の木内秀信さん。今年2025年に第19回声優アワードで助演声優賞を受賞したことも記憶に新しいベテラン声優ですが、この当時はまだデビュー10年にも満たない若手時代。

少し低めの哀愁漂うくたびれた声がテンマによく合っていて、冷酷になりきれない優しさや温かみが滲み出ているのがたまりません。

70話もあるので木内さんの心地よい低音を楽しむにはもってこいの作品です。

ニナ役の能登麻美子さんは当時まだ新人。しかしそうとは感じさせないほどの素晴らしいお芝居。かなり複雑な役どころながら見事に演じてきっています。

作中では何度かヨハンがニナに変装するシーンがあるのですが、ニナの声なのにヨハンが喋っているとはっきり分かるのが鳥肌モノでした。

そのヨハンを演じているのは佐々木望さん。独特の低いハスキーボイスはリアリティのある他の声優さんのお芝居の中で良い意味で浮いています。

ヨハンは途中まで本当に実在するのかはっきりしない存在として描かれます。“怪物”と呼ばれ恐れられるほど悪のカリスマ性を持つ彼を佐々木さんはとらえどころのない囁くような喋り方で演じており、それが一層ヨハンの存在感をあやふやにしているのです。

ちなみに幼少期のヨハンを演じているのは当時子役だった上村祐翔さん。まだ声変わりする前なので言われなければ気づかないほど今とは声が違いますが、子役とは思えないほど雰囲気がありこの頃からすでに上手かったのかと驚かされました。ファンの方は一見の価値あり。

テンマの協力者となるレギュラーキャラクターたちの声優陣もベテラン揃い。

特に印象的なのは第40話から登場するグリマー役の田中秀幸さん。テンマの無実を信じるフリージャーナリストで、人の良い笑顔の裏に深い闇を持つ超重要人物。

穏やかで柔和な田中さんの声がいつも笑顔のグリマーにとても合っている一方で、人間らしい感情を苦手とする彼が時折こぼす声の虚ろさにも驚かされます。引き算の演技ってこういうことを言うのかもしれません。

磯部勉さん、永井一郎さん、菅生隆之さん、安原義人さんなどアニメだけでなく吹き替えで有名な大ベテラン声優たちのお芝居も必聴。

圧倒的な存在感を放っているのはテンマを連続殺人の容疑者として何度も追い詰めるルンゲ警部役の磯部勉さん。

磯部さんの重厚な低音の破壊力は何度聴いても慣れません。地を這うような声の低さにも驚かされますが、容疑者を精神的にも追い詰めるルンゲ警部の圧が声からビシビシ伝わってきます。

狂気すら感じるテンマへの執着心の表現もさすが。恐ろしくもありどこかお洒落さも感じられる語り口がくせになりそう。

個人的に好きなのが、かなり早い段階からテンマの味方となる犯罪心理学者のDr.ギーレン。キャラクター的にも好きなんですが演じる菅生隆之さんの声とお芝居がものすごく心地よくてとても耳が幸せでした。

敵役の声優陣も凄い

テンマと敵対する人物たちの声優陣も豪華。敵対勢力の幹部などを演じた野沢那智さんや田中信夫さん、熊倉一雄さん、北村弘一さん、家弓家正さんなどは今はもう亡き名優たち。

終盤まで謎の人物として描かれる最重要人物フランツ・ボナパルタ役の野沢那智さんの存在感も印象的。

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、最後まで本性が明かされないボナパルタのミステリアスさをあの何とも言えない柔らかく滑らかなお芝居で隠し通していたのが凄い。どっちにも取れる絶妙なバランス。

この作品には100%悪人も100%の善人も登場しないので、アニメと違って生の人間(役者)に声を当てる吹き替えの経験豊富な声優を多く起用しているのかもしれません。

そしてこの他にもとにかく有名な声優さんがまだまだこれでもかと出てきます。あまりにも多すぎるので全ては書けませんが羽佐間道夫さんや大塚周夫さんや田中敦子さん、関智一さんや平田広明さん、千葉繁さん、池田秀一さん、大塚明夫さんなどなど……。

ほぼ1話くらいしか登場しないキャラにまで納谷悟朗さん、銀河万丈さん、小山力也さん、池田昌子さん、青野武さん、桑島法子さん、大塚明夫さん、高木渉さん等々……豪華過ぎて最後の方はだんだん笑えてきてしまったので声優好きなら間違いなく楽しめます。

「MONSTER」はどこで見られる?

「MONSTER」は2025年5月現在、DMM TVHuluU-NEXTアニメタイムズなどで見放題配信されています。

※本ページの情報は2025年5月時点のものです。
最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。

またYoutubeのアニメタイムズ公式チャンネルでは2025年6月3日までアニメ本編第1話~3話までを期間限定で無料配信しているので、興味のある方はぜひ!

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