23話のあらすじ
地上の楽土建設のためケティル農場の接収は実行すると退かないクヌート。トルフィンはこれ以上話しても解決は望めないと知ると、「俺は逃げる」と宣言。その予想外の返答にクヌートは……。
23話の感想
奴隷も戦争もない平和な国を作りたいと願うトルフィン。
争いのない地上の楽土建設を願うクヌート。
どちらも目指すゴールは同じはずなのに、そこに至るまでの道のりは真逆。故に話し合いは平行線。
クヌートは自分を殺して目的を果たすかとトルフィンを挑発しますが、それに対してトルフィンの返答はなんと「俺は逃げる」というあまりにもシンプルな言葉。
逃げて、逃げて、クヌートの手が届かないところまで逃げて。逃げ場がなくなるまで俺は戦わないというトルフィンの強い”不殺””非暴力”の覚悟。
それを聞いたクヌートは肩を震わせて……まさかの大爆笑。おそらく従士たちどころか、ウルフでさえ見たことがなかったであろうクヌートの笑顔。
それはまるで、まだラグナルが生きていた頃のような、純粋でこどものような笑顔。
思えばラグナルとしか口を聞けないほど人見知りで臆病だったクヌートが初めて会話をしたのもトルフィンだったんですよね。
ともにアシェラッドによって人生を捻じ曲げられ、戦う術を学んだ者同士。お互いにとって少年期に唯一そばにいた同年代の少年同士。図らずも望まずも、アシェラッドの戦術や生き抜く術を受け継いだ弟子同士。
その2人が紆余曲折を経て、別々の道を歩みながら志をともにする。不思議で奇妙な縁。
印象的なのはトルフィンを前にして、スヴェン王の亡霊が「この男は危険だ」とそそのかしていたのが、トルフィンの「俺は逃げる」発言以降は一切スヴェン王が登場しなかったこと。
おそらくクヌートの中にはずっと暴力によって他者を支配し、楽土建設のためなら多少の犠牲は仕方ないという考え方に葛藤していたのでしょう。スヴェン王の亡霊はクヌートの罪悪感の象徴。
けれどトルフィンとの対話の中で、自分とは全く別の方法でこの世の楽土を作るという同じ目的を目指す同士を見つけたことで、吹っ切れたのかな。
ケティル農場からの撤退後、イングランドに駐留させていたデンマーク軍を撤退させたとありましたが、本当は心のどこかでずっとそうしたかったクヌートもいたのではないかなと。トルフィンの言葉によって踏ん切りがついたようにも思えました。
それにしてもトルフィンの「俺は逃げる」発言。物語の主人公が「逃げる」という選択をするって本来ならかっこよくはないはずなんですが、トルフィンが言うとあまりの重みに泣けました。
何よりも彼が非暴力を貫いたことによって、ケティル農場を救っただけでなく、一国の王の心を変えイングランドから軍を撤退するまで影響したことが感動。
ようやくトルフィンは「最初の手段」で暴力を回避し解決まで導けたんですね。
でもそれはトルフィンだからできたこと。自分の身を守れるだけの強さがあったからこそ。誰にでもできることではありません。
たとえばドロットに殴られたのがエイナルだったら、オルマルだったら。たぶんそこで死んで終わりだった。
難しいですね、非暴力を貫くのにも強さがいるというのは。
そして農場編もいよいよ終盤。
アルネイズの墓前で、ヴィンランドに奴隷も戦争もない国を作ることを誓ったトルフィンとエイナル。2人がお互いのことを「兄弟」と呼び合っていたのがとてもグッときました。
2人とも絶望の底まで落ちたその先で、苦楽を共にする「兄弟」と出会えたというのが……。
またトルフィンがヴィンランドに平和の国を作ることを決意させるきっかけを与えたのがアルネイズというのがまた。あまりにも悲しい結末を迎えてしまったアルネイズでしたが、せめてその魂だけでもヴィンランドに一緒にいけたら……。
農場編の裏主人公とも言うべきオルマルもまるで別人のように成長しました。奴隷だったトルフィンに（会話したのもキツネにそそのかされて殺そうとした時以来？）お礼を言うオルマル。
トルフィンから本当の強さをきちんと学べていたオルマルにまた涙。ケティルはもうすっかり廃人のようになってしまったけれど、本当の強さを知っているオルマルがいてくれるならきっと農場はこれからも安泰ですね。
トルフィンたちが去った後、農場でのそれぞれの生活が描かれているのも素敵でした。
あんなに嫌がっていた農作業をオッドニーちゃんと頑張るオルマル。
言葉もなく涙を流すケティルに寄り添う奥様。
蛇や客人たちの拙い農作業を見守るスヴェルケルさん。
これからは、今まで以上に平和になってほしい。
ところで蛇の本名ロアルドっていうんですね。ロアルド……！ 最後までかっこよかった！！！！
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※本ページの情報は2023年1月時点のものです。
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