【アニメ感想】心が壊れていく狂気の物語… 時光代理人‐LINK CLICK‐Ⅱ 第09話「3つの物語」 |

9話のあらすじ

舞台俳優だった銭進チエン・ジンの妻。だが妻と共演者の男との関係を疑い始めた頃、妻が何者かに殺されてしまう。悲しみに暮れる銭進は同期の肖力シャオ・リーに本音を吐露するが彼の口から衝撃的な事実を聞いてしまい……。
そして妻の死後まもなく、とある殺人事件の現場で小さな兄妹と出会った頃から運命が狂い始める。

9話の感想

「3つの物語」と題された通り、第9話は3章仕立て。

第1章「必然の悲劇」は銭進がまだ警察官だった頃のお話。
銭進の妻は舞台俳優。しかし恋仲を演じる共演者の男・庄師ジュアン・シュワイと何やらぎこちない雰囲気。さらに妻が何者かと親密な電話をしているのを目撃してしまい、銭進は妻への不信感を募らせていきます。
しかしその矢先に妻が死亡。
妻とはあまり上手くいっていなかったとはいえ、悲しみに暮れる銭進は同期の肖力とお酒の場で苦しい胸中を明かします。
ところがその肖力から衝撃的な事実を告げられてしまいます。それは妻が死亡時、子どもを身ごもっていたというもの。それを聞いて涙を流しながら笑い始める銭進。
名言はされていないもののおそらくは浮気相手の子……そしてこれが銭進を悪堕ちさせる最初の一歩となってしまいました。

出典：TVアニメ「時光代理人‐LINK CLICK‐」公式（＠linkclick_anime）より

第2章「偶然の喜劇」は銭進が妻の死後まもなく担当したとある殺人事件の現場に向かうところから始まります。その事件こそが、劉蘭リウ・ラン・李凡リー・ファン夫婦殺人事件。
そこでまだ幼い李リー・天辰ティエンチェン・天希ティエンシー兄妹と出会います。泣きじゃくる天希と「僕が殺した」と狂った笑みを浮かべる兄妹を見て思わず抱きしめる銭進。しかし天辰の狂気に呼応するように銭進も笑い始める光景は異常そのもの。

その後、学校で再びあの黒髪の少年と会った天辰。彼のことを「怪我を負った獣」と表現した少年は「近い将来、狩人になれるチャンスが来る」と予言めいたことを口にします。そして「また会える？」という天辰の問いかけに不敵な笑みを浮かべ「必ず」とも。
この少年が何者なのか未だ明かされていませんが、未来を知っているような口ぶりなのが気になりますね。使用人が車で迎えに来ていたり「坊っちゃん」と呼ばれていたことから家は相当なお金持ちの様子。

そして時は流れ弁護士になった銭進は成長した天辰と共に、依頼人である劉旻リウ・ミンのもとを訪れ、ネットで誹謗中傷してくる者に報復してほしいと一枚の写真を渡されます。その写真を見てまたしても狂気的な笑い声をあげる天辰。これが銭進と天辰、そして劉旻が手を組むきっかけになった出会い。

第3章「兄妹のおとぎ話」はデフォルメされたキツネの家族のおとぎ話を、李兄妹の過去になぞらえた絵本風のお話。
2羽の鳥が母キツネの浮気話を吹聴したことがきっかけで家が燃やされトチ狂った父キツネが暴走、兄妹は両親を失い二人きりになってしまいます。
そこへ現れたのはフードを被った狩人。彼は兄キツネに弓矢を与え戦う術を教えます。ぐんぐん上達した兄キツネはついに、家族を崩壊させたあの鳥たちを矢で射殺すまでに成長。
しかしそれだけでは留まらず、兄キツネは何の恨みもないウサギの親子まで狙い始めます。その姿に恐怖を覚えた妹キツネは逃げ出してしまい……。

このおとぎ話の登場人物は兄キツネ＝天辰、妹キツネ＝天希。そしてあらぬ噂を吹聴し父キツネ（李凡）をけしかけた鳥の正体は一家の隣室に住んでいたあのゲーマーの男・鄧ドン。あの事件の日、李凡のDV現場を目撃して警察に通報した彼が実は全ての元凶だったのです。天辰が彼のことを敵視していたのは、あることないことを守衛に噂話していたからだったんですね。
さらになんと劉旻に誹謗中傷していたらしき男もこの鄧。兄キツネが鳥を矢で射抜いたのは、天辰が狩人に与えられた力によってすでに鄧を殺したことを示唆しています。
ではその狩人とは一体誰なのか。李兄妹を引き取った銭進かなとも思いましたが、おそらくあの黒髪の少年なのでしょうね。やはり少年＝黒幕で間違いなさそう。

最愛の家族に裏切られ、失い、その絶望から共鳴しあい悪の道へと堕ちてしまった銭進と天辰。鍵となるのはおそらく天希。
そしてヒカルの残した写真にダイブしたトキはここからどんな選択をするのか。

銭進役の中村悠一さん、天辰役の村瀬歩さんの狂気に満ちた笑い声が伝染していく表現に何度もゾッとさせられました。
何よりも素晴らしかったのは脚本と演出。トキinヒカルが病室を抜けて町を駆け抜けるシーンの合間に銭進の過去回想を挟む構成も上手いですし、回想がコントラスト強めのモノクロ画面なのも壊れてしまった銭進の心を現しているよう。事件現場で李兄妹に出会った瞬間、モノクロだった映像に色がついて鮮やかな世界に変わっていくのも鳥肌でした。
絵本風のデフォルメアニメで李兄妹の過去に何があったのか示唆させる演出も上手い。
第2期はここまで全話神がかり的な面白さですが、今回はその中でもぶっちぎりの神回でした。