【アニメ感想】無垢で無知な女たちの犯した罪「烏は主を選ばない第13話烏に単は似合わない」

アニメ

2024.06.302024.07.21

13話のあらすじ

若宮が取り出した一通の文。それはあせびが東家の下男・嘉助かすけに宛てたものだった。そこに記されていた内容から若宮が導き出したのは悲しく残酷な真実。
誰が若宮の文を奪ったのか、なぜ早桃は殺されたのか、なぜ侵入者は秋殿に現れたのか。全ての謎が繋がり……。

13話の感想

とんでもないピュアモンスターが爆誕してしまいました……。
あせびの君、彼女の視点から始まったこの物語。浮世離れした世間知らずなお嬢様、貴族の常識に欠ける彼女の視点から描かれることで我々視聴者にとって語り部のような存在でしたが、それを逆手に取ったミスリードに見事に騙されました。

若宮に恋い焦がれ后になることを一途に夢見てきたあせび。しかしその思いは純粋すぎるあまり狂気と紙一重。
あせびが東家の下男・嘉助に宛てた手紙には「赤い着物の部屋」に来るよう書かれていました。それはつまり秋殿――真赭ますほの薄すすきに与えられた御殿。
侵入者がなぜ真赭の薄の寝室に忍び込んだのか謎だったのですがこれではっきりとしました。そういえばあせびが赤い着物を御殿に飾ろうとして女房のうこぎにたしなめられていたシーンもありましたね。伏線が細かい……。

あせびとしては当初は本当に春殿に嘉助を呼ぶつもりだったのでしょうが、赤い着物を飾れなかった時点で何も行動を起こそうとしなかったところにゾッとします。
東家一の姫・双葉もあせびに焦がれる嘉助が夜這いに現れて塞ぎ込んでしまったと言ってたのを見ると、やはり確信犯だった気もしますね。
しかし双葉を陥れた（？）ことにも、自分のせいで嘉助が殺されたことにも一切罪悪感を抱いていないのが一番のゾッとするポイント。

さらに驚きなのは早桃を転落死させた真犯人の正体。
嘉助への文を早桃に届けさせていたあせびは彼女が文の内容を知ってしまったことに気づき、このままでは自分が桜花宮を追放されてしまうと思い藤波に相談。しかし望んでいた返答が得られなかったのかまるで別人のように虚ろな表情を浮かべるあせび。それを見た藤波は彼女からの信頼と好意を失いたくないあまり、早桃を桜花宮から追い出そうとします。
烏に転身して飛び去るよう強要するあまり舞台から突き落としてしまうも、着物が邪魔をして転身できなかった早桃はそのまま……。
また若宮が桜花宮の姫たちに宛てていた文を隠していたのも藤波だったことが判明。思い出せば序盤の方であせびが若宮からの手紙を読んで頬を染めているシーンがあったと思うのですが、今思うとあれはあせびだけが文を受け取っていたという伏線だったんですね。藤波はあせびを后にさせたい一心で他の姫たちの文を捨てていたのです。
それもこれもぜーんぶ、あせびのため・・・・・・を思って藤波が起こしたこと。当のあせびはというと「藤波様も嘉助も私のためを思ってしてくれたことなのにこんな不運なことになるなんて……」と他人事通り越して悲劇の姫気取り。
いや彼女の言動や表情を見るに、本心からそう思っているんでしょうね。真赭の薄や双葉を陥れるつもりも、早桃や嘉助を死なせるつもりも彼女にはなかった。自分に都合の悪いことは見えていない、認識できていないのかも。悪意がない分より恐ろしくてたちが悪い……。朝廷が生んでしまったピュアモンスターですね。

出典：アニメ『烏は主を選ばない』NEP公式（@nep_yatagarasu）より

さてこうして桜花宮で起きた様々な事件は解決しましたが、問題は后選び。浜木綿はまゆうは追放・脱落し、白珠は一巳を選び、真赭の薄は自ら辞退、あせびは若宮に嫌われ論外。じゃあ誰が后に……？
と思っていたらなんと、西家の女房の中に逃亡したはずの浜木綿の姿が……！
真赭の薄によって匿われていたという浜木綿。しかも若宮とは幼い頃からの親友で本当の名は「すみ」。あせびの回想で度々映っていた幼少若宮と一緒にいたあの少年、実はあれ澄尾さんじゃなくて浜木綿だったんですね……！こっちもとんでもないミスリード！！
若宮は真赭の薄に向けたのと全く同じ求婚の言葉を口にして、浜木綿を后に迎え入れます。その浜木綿自身は真赭の薄が后にふさわしいと思っていたようですが、最初はバチバチだったこの2人が最終的にはお互いを認め合い信頼を寄せるようになったのがまた胸熱ですね。

登殿の儀は浜木綿が后に選ばれることで終了し、若宮は宗家と四家を正しい形に戻すため浜木綿と共に真の金烏を目指すことに。
一方で約束通り雪哉は一年で近習を辞め故郷に戻ることにしたようです。「金烏になることを諦めるなら残ります」という言葉がなんとも雪哉らしい。
ただ次回以降は垂氷郷に戻った雪哉がまた何らかの事件に巻き込まれていくようなので、2人の再会は遠くないかも……？

ところでこの第13話の特殊EDいつにも増してとても美しくて惚れ惚れしてしまいました。
四季折々和の美しさが全て詰まった豪華絢爛なアニメーションが志方あきこさんの楽曲にぴったり。あまりの美しさに鳥肌が立ちました。