少し懐かしいアニメをレビューするこのシリーズ。あまり知られていない隠れた名作や、最近アニメを見始めた人にもぜひ見てほしいオススメアニメなどを取り上げていく予定です♪
ちなみに前回の記事はこちら↓
そして今回レビューするのは2012年に放送されたTVアニメ「氷菓」です。
「氷菓」とは?

「氷菓」は米澤穂信さんによる推理小説「〈古典部〉シリーズ」が原作のTVアニメ。2012年の4月~9月にかけて全22話でアニメ化されました。
男女4人の高校生を中心に、何気ない日常の中で起こるちょっと不思議な出来事を謎に見立てて解き明かしていく、人の死なない日常系ミステリー作品です。
原作者の米澤穂信さんは同じくアニメ化された「小市民シリーズ」の作者としても知られています。
またアニメーション制作は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」や「響け!ユーフォニアム」などの京都アニメーションが手掛けており、美しい映像や作画も楽しむことができます。
好奇心の鬼と省エネ探偵
物語の主人公は「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に。」がモットーの省エネ主義者・折木奉太郎。面倒くさいことには極力首を突っ込まないようにするちょっと冷めた性格の男子高校生。
彼の通う神山高校は文化系の部活動が多いにも関わらず、奉太郎はどこの部にも属さない帰宅部。しかし神山高校OGの姉から、廃部寸前の古典部に入ってほしいと頼まれたことがきっかけで、彼の灰色だった高校生活は大きく変化していきます。
奉太郎が古典部で出会った同い年の女子生徒・千反田えるはお嬢様然とした見た目と言葉遣いながら、日常の中のちょっとした謎や違和感を見つけるとそれが解決するまで気になって仕方ない好奇心の鬼。彼女が一度「わたし、気になります!」と言い出したら最後、絶対に食い下がることはありません。

面白いのは奉太郎が導き出す謎の答えは必ずしも真実ではなく、えるが納得する答えであるかどうか、という点。奉太郎にとっては真相にたどり着くことよりもえるの好奇心が収まってくれることの方が大事なのです。
彼女の押しの強さに負けて様々な謎を解決していくうちに、古典部のえるや友人でもある福部里志、伊原摩耶花との絆が次第に深まっていく、冷めた性格だった奉太郎の変化や成長も見どころのひとつです。

秀逸な日常ミステリー
最大の魅力はなんと言っても殺人事件も怪盗も出てこないのに本格ミステリーを楽しめること。人が死なないどころか怪我人も出ないし、そもそも犯罪すらほとんど起こらないので、ミステリものは好きだけど物騒なのは苦手だという人には特にオススメ。
たとえば第1話では部室の中にいたえるが気づかないうちに外側から鍵をかけられていた謎、第2話では学校の図書室で毎週金曜日に返却される本の謎など、ちょっと不思議だけどほとんどの人はスルーしてしまいそうなことを題材にしているのが魅力。

秀逸なのは第8話~第11話にかけて描かれる「愚者のエンドロール」。文化祭に向けて2年F組が自主制作したミステリー映画の脚本が訳あって途中までしか完成しておらず、映画内で発生した殺人事件のトリックとその犯人を奉太郎が推理していく、という異色のストーリー。
脚本担当の生徒はなぜ途中までしか書けなかったのか、なぜ古典部に探偵役を依頼したのか。脚本が完成しなかった本当の理由、そこに隠された2年F組の生徒たちそれぞれの真意が謎を解く鍵になっている二重構造にあっと驚かされました。
最も見応えがあったのは第12話~第17話の「クドリャフカの順番」。これは3日間かけて行われる文化祭での出来事を、古典部4人それぞれの視点から丁寧に描いていく作中最長のシリーズ。
手違いで200部発注してしまった文集「氷菓」をどうにか売りさばこうと奔走するえる、兼部する漫画研究会で同人漫画「夕べには骸に」について部員と揉めてしまう摩耶花、「氷菓」の宣伝も兼ねて様々なイベントに参加し楽しみつつもどこか浮かない表情の里志、一人店番する奉太郎と客との間で偶然発生した“わらしべプロトコル”。
さらには「十文字」を名乗る人物が文化祭中に様々な部活から部に関するアイテムを一つ盗んでは犯行声明を残していく「十文字事件」が発生。全く関係なさそうな出来事が次から次へと繋がっていく一連の流れは圧巻の一言。

異常に豪華な声優
アニメ版「氷菓」の魅力は京都アニメーションによる映像美ともうひとつ、ちょい役にまで超豪華な声優を多数起用しているところ。
放送当時もその豪華さに驚いた記憶がありますが、10年以上経った今見ると改めて衝撃を受けました。たった1話のみ、それどころかセリフ量もそれほどないキャラクターに主役級の声優が何人も起用されているのがまた衝撃的です。
まずはメインキャストと比較的出番の多いキャラクターについて。
キャラクター | 声優 |
---|---|
古典部1年 折木奉太郎 | 中村悠一 「呪術廻戦」五条悟 「ハイキュー!!」黒尾鉄朗 |
古典部1年 千反田える | 佐藤聡美 「けいおん!」田井中律 「フルーツバスケット(2019)」花島咲 |
古典部・総務委員1年 福部里志 | 阪口大助 「銀魂」志村新八 「血界戦線」レオナルド・ウォッチ |
古典部・漫画研究会1年 伊原摩耶花 | 茅野愛衣 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」めんま 「ちはやふる」大江奏 |
奉太郎の姉・古典部OG 折木供恵 | ゆきのさつき 「犬夜叉」日暮かごめ 「銀魂」志村妙 |
2年F組 入須冬美 | ゆかな 「コードギアス 反逆のルルーシュ」C.C. 「ふたりはプリキュア」雪城ほのか/キュアホワイト |
壁新聞部3年 遠垣内将司 | 置鮎龍太郎 「テニスの王子様」手塚国光 「地獄先生ぬ~べ~」鵺野鳴介 |
占い研究会1年 十文字かほ | 早見沙織 「鬼滅の刃」胡蝶しのぶ 「SPY×FAMILY」ヨル・フォージャー |
天文部2年 沢木口美崎 | 伊瀬茉莉也 「HUNTER×HUNTER(2011)」キルア=ゾルディック 「メイドインアビス」レグ |
これだけでも相当豪華ですが、他にも一話のみ・もしくは1シリーズのみ登場のキャラクターについて。
キャラクター | 声優 |
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図書室司書 糸魚川養子 | 小山茉美 「名探偵コナン」ベルモット |
摩耶花のいとこ 梨絵 | 豊崎愛生 「けいおん!」平沢唯 |
摩耶花のいとこ 嘉代 | 小倉唯 「HUGっと!プリキュア」輝木ほまれ/キュア・エトワール |
2年F組 江波倉子 | 悠木碧 「魔法少女まどか☆マギカ」鹿目まどか |
2年F組 中城順哉 | 近藤孝行 「テニスの王子様」大石秀一郎 |
2年F組 羽場智博 | 阿部敦 「とある魔術の禁書目録」上条当麻 |
2年F組 海藤武雄 | 小西克幸 「鬼滅の刃」宇髄天元 |
2年F組 杉村二郎 | 入野自由 「千と千尋の神隠し」ハク |
2年F組 山西みどり | 小清水亜美 「コードギアス」紅月カレン |
2年F組 瀬之上真美子 | 広橋涼 「僕のヒーローアカデミア」峰田実 |
2年F組 勝田竹男 | 泰勇気 「刀剣乱舞」宗三左文字 |
2年F組 鴻巣友里 | 茅原実里 「涼宮ハルヒの憂鬱」長門有希 |
キャラクター | 声優 |
---|---|
総務委員会委員長 田名辺治朗 | 福山潤 「コードギアス」ルルーシュ・ランペルージ |
生徒会長 陸山宗芳 | 森川智之 トム・クルーズ |
漫画研究会 河内亜也子 | 浅野真澄 「Go!プリンセスプリキュア」海藤みなみ/キュアマーメイド |
漫画研究会部長 湯浅尚子 | 進藤尚美 「機動戦士ガンダムSEED」カガリ・ユラ・アスハ |
被服研部員 | 谷山紀章 「進撃の巨人」ジャン・キルシュタイン |
園芸部員 | 杉山紀彰 「NARUTO‐ナルト‐」うちはサスケ |
クイズ研究会副部長 | 日笠陽子 「けいおん!」秋山澪 |
お料理研究会部長 | 杉田智和 「銀魂」坂田銀時 |
お料理研究会副部長 | 平川大輔 「ジョジョの奇妙な冒険」花京院典明 |
放送部部長 | 吉野裕行 「ハイキュー!!」岩泉一 |
漫画研究会部員 | 竹達彩奈 「けいおん!」中野梓 |
漫画研究会部員 | 寿美菜子 「けいおん!」琴吹紬 |
この他に第22話には諏訪部順一さん、永井一郎さん、石塚運昇さん、千葉繁さんなど錚々たる声優陣が出演。
たった2クールの作品で端役にここまで豪華な声優が出演しているのはちょっと珍しいかもしれません。ここに記載した以外にもまだまだたくさんの有名声優が出演しているので、誰がどの役を演じているのか当てながら見る楽しみ方もオススメ。
「氷菓」はどこで見られる?
「氷菓」は2025年4月現在、DMM TVやdアニメストア、U-NEXTなどで見放題配信されています。
※本ページの情報は2025年4月時点のものです。
最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
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