少し懐かしいアニメをレビューするこのシリーズ。あまり知られていない隠れた名作や、最近アニメを見始めた人にもぜひ見てほしいオススメアニメなどを取り上げていく予定です♪
ちなみに前回の記事はこちら↓
そして今回レビューするのは2020年に放送されたTVアニメ「ID:INVADEDイド:インヴェイデッド」です。
「ID:INVADEDイド:インヴェイデッド」とは?
「ID:INVADEDイド:インヴェイデッド」は2020年1月に放送されたオリジナルTVアニメ。
監督は「Fate/Zero」や「アルドノア・ゼロ」のあおきえいさん、シリーズ構成・脚本は「ディスコ探偵水曜日」などの小説家である舞城王太郎さん、キャラクター原案は「ブラッドラッド」の小玉有起さんです。
連続殺人犯を特定するために犯人の残した殺意の思念粒子を採取し、そこから構築された殺意の世界「イド」に名探偵が潜り込み犯人に関する手がかりを探すという一風変わったSFミステリー作品。
その難解な設定とストーリー故に万人受けしなかったのか知名度はあまり高くないものの、1クールのオリジナルアニメとしては非常に完成度が高く知る人ぞ知る名作となっています。
連続殺人犯の殺意の世界「イド」
本作の舞台となるのは連続殺人犯を特定するために発足された組織「蔵」。
まず外務分析官が殺人現場へ赴き、「ワクムスビ」と呼ばれる携帯端末によって現場に残された犯人の「殺意の思念粒子」を採取。
その情報から「ミヅハノメ」と呼ばれるシステムによって、対象者の殺意=無意識の世界「イド」を仮想空間に形成。
ミヅハノメのコックピットから「パイロット」がイドの中に投入され、犯人の深層心理から手がかりを探していく、という流れ。
かなり難解な設定ですが、基本的には「犯人の深層心理に潜り込み犯人を特定する」と思っておけば大丈夫。
ちなみに「ミヅハノメ」は日本神話に登場する水の神で、「ワクムスビ」はその弟の名前がモチーフになっているようです。
殺意の世界「イド」は哲学や精神分析学における無意識を意味する言葉・イドと、井戸、異土のトリプルミーニング。
ミヅハノメ | 犯罪者の殺意を感知するシステム。「ワクムスビ」で採取された思念粒子から対象者のイドを形成する。パイロットはコックピットからイドの中へ意識のみ投入される。 |
ワクムスビ | 空気中に漂う目に見えない思念粒子を感知・採取する携帯端末。 |
思念粒子 | 人間の感情が物質的な粒子となったもの。作中では殺意の思念粒子のみ登場。風に飛ばされたりすることもあるらしい。 |
イド | ミヅハノメによって構築される仮想世界。常に「カエル」の死体がある以外は対象者の殺意によって全く異なる世界が広がる。 |
名探偵 | ミヅハノメのコックピットを介してイドの中に潜るパイロット。イドに投入される度に自身の素性など全ての記憶がリセットされ、「カエル」の死体を認識することで名探偵としての名前と役割を思い出す。 |
蔵 | 連続殺人犯を特定するために発足した特殊組織。 |
井戸端 | 「蔵」の中の組織。ミヅハノメを運用し、犯人の手がかりについて分析を担当する。 |
外務分析官 | 現場で「ワクムスビ」を使用し殺意の感知や、井戸端と連携して捜査を行う。 |
「イド」に潜る探偵と「カエル」の死の謎
パイロットはイドに潜ると一度全ての記憶を失い、見た目年齢や衣装などが異なる「名探偵」として目覚めます。
主人公の鳴瓢秋人もこのパイロットで、イド内での姿は「名探偵・酒井戸」。本来の鳴瓢よりも少し若い姿で、性格も少し違うよう。
名探偵はイド内で目覚めると始めは自分の名前すら覚えていませんが、とある少女の死体を発見することで自らの名前と名探偵であること、少女の名前が「カエル」であること、そしてなぜ「カエル」が殺されたのか謎を解かなければならないことを思い出します。
イドは殺人犯によって毎回全く異なる世界が形成され、街や建物がバラバラになっている世界だったり、高層マンション郡が燃え続ける世界だったりと様々。
そして毎回死体となって登場する「カエル」も死因は様々。
ただし全てのイドに共通しているのが、ステッキと帽子が特徴的な謎の紳士「ジョン・ウォーカー」。顔がモザイクで隠れているこの人物は連続殺人犯たちのイドに必ず登場することから、「蔵」は殺人犯たちの黒幕なのではと推測。
「カエル」という少女は何者なのか、なぜ必ず死んでいるのか、そして「ジョン・ウォーカー」は実在する人物なのか。欠けていたピースが埋まっていくように少しずつ明かされていく真実にきっと驚かされるはず。
ちなみにイドに潜るには条件があり、それは「殺人犯であること」。もっと正確に言うと「イドが形成できること」つまり殺意の思念粒子が採取されたかどうか。
第1話を見て一番衝撃を受けるのは主人公がイドに潜っている=主人公が殺人犯であることが遠回しに明かされるその構成。難解な設定ばかりなのに説明セリフがただの説明に聞こえないよう作り込まれているのが素晴らしい。
3つの視点から展開していく推理劇
イドの中で「カエル」の死の謎に迫る名探偵――酒井戸。一見すると名探偵である彼の頭脳に頼って殺人犯を特定するのかと思いがちですが、推理するのは彼だけではないのが本作の面白いところ。
あくまでも名探偵の役割は「カエル」の死の謎を解くこと。そもそも名探偵は目覚める度に記憶をリセットされるので、自分がミヅハノメの中に投入されているパイロットであることすら知りません。
名探偵がイドの中で「カエル」の死の謎を解く姿を、現実世界から見守るのが「井戸端」のスタッフたち。彼らは名探偵の思考や見たり感じたりした情報を基に、殺人犯に繋がる手がかりやヒントを分析していきます。
イドの中は殺人犯の殺意――つまり深層心理を具現化したような世界で、寝ている時に見る夢と同じく現実ではありえないことが起こります。無重力だったり、人が空を飛んでいたり、人の顔が常に変化し続けたり。しかしその中には殺人犯が昔住んでいた街や建物が紛れ込んでいたり、現実に存在する写真が映っていたりと犯人に繋がる手がかりも散りばめられており、井戸端スタッフはそれらを分析し犯人特定へと繋げています。
その井戸端と連携を取りながら、実際に殺人現場や犯人の捜索に当たるのが外務分析官。彼らは殺意を感知する端末「ワクムスビ」を使い思念粒子を採取する他、井戸端が犯人を特定した場合は警察と共に実際に現場へと赴き犯人と対峙することもしばしば。
殺人現場へ実際に足を運ぶことで、犯人がどんな思考の持ち主でどこに潜んでいるのかを推理していくのも彼らの仕事。
この3つの視点から連続殺人犯の正体に迫っていく流れがとても見応えがあり、本作の魅力にもなっています。
声優・津田健次郎の凄み
本作の主人公・鳴瓢秋人と名探偵酒井戸を演じているのは俳優としても人気上昇中のベテラン声優・津田健次郎さん。イケボと評される美声の持ち主でそのかっこよさが度々話題を呼ぶ人気声優ですが、津田さんの演技力の高さを堪能できる作品のひとつがこの「ID:INVADEDイド:インヴェイデッド」。
名探偵・酒井戸は冷静でクールな青年でありながら、飄々とした雰囲気も持ち合わせており、イドの中で出会う人々にも紳士的。特に女性や子どもにはとても優しく、死体となって登場する少女のことも「カエルちゃん」と呼んでいます。
一方、現実世界の鳴瓢は酒井戸よりも一回りほど年齢が高く見えるやさぐれた雰囲気の男性。元は警察官でしたがとある連続殺人犯によって娘を殺害され、そのショックから妻も自殺、仇討ちで犯人を殺したことから収監されたというハードな経歴の持ち主。
声も酒井戸より低く気だるげで、別人のようにも聞こえます。
ある種の一人二役を演じているだけでもすごいのですが、何よりも衝撃的だったのが第3話「SNIPED 滝の世界」での演技。殺人犯を言葉だけで精神的に追い詰め、最終的に自殺へと追い込んでいくその声の凄みに鳥肌が立ち背筋がゾッとしました。殺意以外の他の感情がごそっと抜け落ちているような虚ろな声で、大きな声は出していないのに追い立ててくるような圧迫感。人間の持つ声と言葉には人を死に至らしめるほどの力があるのだと思い知らされます。
第10話「INSIDE‐OUTED Ⅱ」での、鳴瓢が妻と娘の死を受け入れ涙ながらに本音を語るシーンも涙腺崩壊必至の名演技。
津田さんは本作放送の翌年に第15回声優アワードで主演男優賞を受賞していますが、本作での演技が評価されたのではと思います。個人的にも、声優さんの演技史上トップ3に入る名演。
主な登場人物
本作の登場人物は皆ちょっと難しい変わった名前をしていますが、名前の元となったのは脚本家・舞城王太郎さんの出身地である福井県の地酒なんだそう。
「蔵」という組織や酒井戸の名前もお酒にちなんでいるのかも。
鳴瓢秋人
ミヅハノメのパイロット。元殺人課の刑事。最愛の娘を殺した連続殺人犯「対マン」を仇討ちで殺した罪で収監された。イドに潜った際に対象の殺人犯の精神性や弱点を把握し、心理誘導と話術によって自殺に追い込む連続自殺教唆犯でもある。
CV.津田健次郎
代表作:「呪術廻戦」七海建人、「ゴールデンカムイ」尾形百之助、「テニスの王子様」乾貞治
鳴瓢と名探偵・酒井戸を演じる。全編通して聴き応えのある名演を披露。繊細かつ迫力のある演技は聴いていてるだけで圧倒される。
名探偵・酒井戸
イドに潜入した際の鳴瓢の姿。イドの中で「カエルちゃん」の死の真相を探る名探偵。冷静でマイペースだが、子どもと女性には優しい。
CV.津田健次郎
富久田保津
連続殺人犯。通称「穴空き」。作中最初に登場する連続殺人犯であり、最初に登場するイドの持ち主。被害者の頭にドリルで穴を開ける殺人犯で、額に空いている穴も自分で開けたもの。
CV.竹内良太
代表作:「魔法使いの嫁」エリアス・エインズワース、「ハイキュー!!」牛島若利
独特の響く低音が魅力的な声優さん。無愛想で冷静沈着な役が有名だけど、本作ではちょっと色気とユーモアのある低音が楽しめる。
ネタバレ注意(クリックすると開きます)
名探偵・穴井戸
イドに潜入した際の富久田保津の姿。富久田よりも少し若く、額の穴や顔の傷もない。陽気でユーモアがある。名探偵としての素質はあまりないようで、「カエルくん」の死の謎に迫る前に死んでしまうことも多い。
CV.竹内良太
本堂町小春
新人の外務分析官。ベテランの松岡とコンビを組む。小柄で童顔だが23歳。正義感が強く見た目からは想像できないほどの度胸と行動力を持つ。また観察眼も鋭く、その高い推理力で現場の情報から犯人特定へと貢献していく。
CV.M・A・O
代表作:「まじっく快斗1412」中森青子、「転生したらスライムだった件」シオン
「市道真央」名義で女優としてデビュー。その後「M・A・O」名義で声優デビューしぐんぐん知名度上げた声優さん。かなりのセリフ量を誇る本堂町を淀みなく滑らかに演じており、キャラクターとしての説得力がすごい。
ネタバレ注意(クリックすると開きます)
名探偵・聖井戸御代
イドに潜入する際の本堂町の姿。酒井戸とは違い現実での姿とほとんど変わらない。イドの中で「カエルさん」の死の謎に迫る。いかにも探偵という格好だが、ブカブカのコートの下は意外と露出度が高くて可愛い。3人の名探偵の中で唯一下の名前があるが、これは名前の元ネタになったお酒が「聖乃御代」だからなのだそう。
CV.M・A・O
カエル
名探偵がイドに潜入した際、必ず出会う謎の少女。常に何かしらの理由で死んでいる。彼女の死因は、イドの持ち主(連続殺人犯)の犯行動機や心情に関係しており、その死因を探ることで犯人の手がかりへと近づいていく。彼女が何者なのか、なぜ必ず死んでいるのかは物語の後半で明かされていく。
酒井戸からは「カエルちゃん」、聖井戸からは「カエルさん」、穴井戸からは「カエルくん」と呼ばれている。
百貴船太郎
井戸端の室長。井戸端スタッフたちの指揮を取る。鳴瓢の元同僚。基本的に真面目でクールだが、殺人犯となった鳴瓢を気にかけるなど情に厚い一面も。
CV.細谷佳正
代表作:「進撃の巨人」ライナー・ブラウン、「ハイキュー!!」東峰旭、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」オルガ・イツカ
凄みのある中低音が武器の声優さん。本作では最終話での演技が素晴らしい。苦悩と葛藤に苛まれる切ないラストは細谷さんのお芝居があってこそ。
東郷紗利奈
井戸端スタッフの一人。百貴の補佐であり、イド内の情報や分析など全般をこなす。百貴がいない場での井戸端スタッフのまとめ役も担当。毅然とした態度の女性で巨乳。
CV.ブリドカットセーラ恵美
代表作:「問題児たちが異世界から来るそうですよ?」久遠飛鳥、「CHAOS;CHILD」来栖乃々
若鹿一雄
井戸端スタッフの一人。主にイド内の情報の推理を担当。お調子者だが数字にはかなり強く推理力も高い。基本は酒井戸の推理をもとに、「カエル」の死の謎について推理することが多い。
CV.榎木淳弥
代表作:「呪術廻戦」虎杖悠仁、「2.5次元の誘惑」奥村正宗、「機動戦士ガンダムNT」ヨナ・バシュタ
白岳仙之介
井戸端スタッフの一人。主にイドの場所と時代を特定する。イド内に現れる建物や文字などから上昇収集・分析するのが仕事。
CV.近藤隆
代表作:「BLACK CAT」トレイン=ハートネット、「家庭教師ヒットマンREBORN!」雲雀恭弥
羽二重正宗
井戸端スタッフの一人。主にイド内の人物解析を行う。イド内に現れる人物の氏名や人物像の解析をするのが仕事。
CV.近藤隆
代表作:「カミワザ・ワンダ」ソウマ
国府司郎
井戸端スタッフの一人。東郷のサポートが主な仕事。小柄で童顔。目立った活躍はないが最後は意外な立場に就任。
CV.加藤渉
代表作:「怪獣8号」市川レノ、「ダンジョン飯」カブルー
松岡黒龍
元ベテラン刑事の外務分析官。刑事時代の鳴瓢や百貴の元同僚。新人の本堂町とコンビを組み、次第に彼女の異常性に気づき始める。
CV.西凛太朗
代表作:「BLEACH」射場鉄左衛門、「進撃の巨人」モブリット・バーナー
ジョン・ウォーカー
様々な連続殺人犯のイドに度々現れる謎の人物。帽子を被った紳士の姿をしており片手にはステッキ、顔にはモザイクがかかっている。共通点のない犯人たちのイドに同じ姿で現れることから「連続殺人鬼メーカー」なのではと「蔵」は推測している。彼が実在する人物なのか、その正体は物語終盤で明かされていく。
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8.ID:INVADEDイド:インヴェイデッド
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