アニメアニメレビュー

【アニメレビュー】大切な人を助けるため小学生にタイムリープする名作ミステリサスペンス「僕だけがいない街」

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少し懐かしいアニメをレビューするこのシリーズ。あまり知られていない隠れた名作や、最近アニメを見始めた人にもぜひ見てほしいオススメアニメなどを取り上げていく予定です♪

ちなみに前回の記事はこちら↓

そして今回レビューするのは2016年に放送されたTVアニメ「僕だけがいない街」です。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

僕だけがいない街」は2012年~2016年にかけてヤングエースで連載された三部けいさん原作によるTVアニメ。2016年に全12話でアニメ化されました。

過去に戻る力を持つ主人公が、自分と周囲の人々に襲う悲劇を回避しながら連続誘拐殺人事件の真相に迫っていくタイムリープサスペンスです。
1クール(全12話)という短さながらストーリーの完成度が高く、タイムリープモノの名作として良く名前が上がる作品。
STEINS;GATE」や「東京リベンジャーズ」、「時光代理人‐LINK CLICK-」などが好きな人には特にオススメです。

監督は「ソードアート・オンライン」や「銀の匙Silver Spoon」などの伊藤智彦さん、シリーズ構成は「ハイキュー!!」の岸本卓さん、キャラクターデザインは「青の祓魔師(1期と2期)」の佐々木啓悟さん、そしてアニメーション制作は「リコリス・リコイル」などのA-1 Picturesが担当。
また劇中音楽とED曲の作詞・作曲を手掛けたのは唯一無二の世界観を持つ梶浦由記さん。今作の劇伴は全てインストのみでそれほど主張は強くないものの、美しくも切ない旋律がここぞという場面で心に突き刺さります。

あらすじ

主人公は29歳の売れない漫画家・藤沼悟ふじぬまさとる
彼は日常のふとした瞬間に自分の意思とは関係なく数分ほど時が遡る「リバイバル」という不思議な能力の持ち主。このリバイバルは悟の周囲で何か良くないこと(事故や事件)が起きる前兆で、その原因を取り除くまで何度も時が遡ってしまうというもの。

ピザ屋でバイトしていた悟はある日、バイクで配達中にリバイバルが発動。トラックの衝突事故に巻き込まれそうになっていた子どもを助けることに成功するも、悟は怪我を負い入院することになってしまいます。

幸いにも軽傷で済んだ悟はたまたま事故の様子を目撃していたバイトの後輩・片桐愛梨かたぎりあいりが見舞いに来たことで親しくなります。
また事故の知らせを受けた母・佐知子さちこが北海道から上京、悟のアパートでしばらく同居することに。

佐知子とスーパーへ買い物に行った帰り、駐車場で再びリバイバルが発動。悟は何も発見することができませんでしたが、佐知子は近くを歩いていた子連れの男に注目。彼女の視線に気づいた男は子どもを置いて車で逃走。佐知子は誘拐を未然に防いだのです。

実は18年前の1988年にも北海道では連続誘拐殺人事件が起きていました。その事件では当時悟のクラスメイトだった雛月加代ひなづきかよ杉田広美すぎたひろみが殺害され、悟が親しくしていた年上の友人・白鳥潤しらとりじゅんが犯人として逮捕。悟は一貫して彼の無罪を主張するも小学生の証言だからと無視されてしまいます。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

佐知子はスーパーでの誘拐未遂事件の犯人が実は過去の連続誘拐殺人事件の真犯人と同一人物なのではと気づきますが、そこへ真犯人の魔の手が迫り……。

この先、本編の結末や真犯人の正体には触れていませんが、ストーリー展開について多少のネタバレがありますのであらかじめご了承ください。一切ネタバレしたくない方はここでブラウザバック推奨。

2006年と1988年

物語開始時点は2006年、悟がリバイバルによってタイムリープするのは18年前の1988年の北海道。それはかつて悟のクラスメイトが巻き込まれた連続誘拐殺人事件が発生する年。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

何者かによって母・佐知子を殺害された悟はその原因が連続誘拐殺人事件にあると考え、その被害者3人を真犯人の手から守り通すことを決めます。
元々の事件で被害者となったのは3人。悟のクラスメイトでひとりぼっちの加代、悟の友人で女の子のような見た目をしたヒロミ、そして近隣の小学校に通う中西彩。

しかし加代は母親とその愛人から虐待を受けており、それもあって中々悟に心を開いてくれません。さらに小学生の身で、未来から来たことを誰かに話すわけにもいかず悟は孤独に奔走することになります。

本作は1988年にタイムリープした悟が加代を虐待と誘拐・殺人から守るために奮闘する過去(1988年)と、佐知子殺害の容疑をかけられ追われる身となった悟が真犯人の手がかりを探す現在(2006年)とを行き来する構成になっています。

真犯人は子どもや自分の正体に気づいた目撃者を躊躇なく手にかけ、さらにその罪を被害者と面識のある人間になすりつけるという狡猾で卑劣な人物。物語終盤に明かされるその素顔にはゾッとさせられること間違いなし。ぜひともネタバレを見てしまう前に自分の目で確かめてほしい。

信頼と勇気

本作のテーマの一つが信じること。
最初は孤独な戦いを強いられていた悟でしたが、誰かを信じる、信じたいという思いが何度も窮地から脱するきっかけとなります。

たとえば悟と同じピザ屋で働く女子高生の愛梨は年上の悟相手にも物怖じしないまっすぐな性格。しかし実は幼少期に父親が万引きした疑いをかけられ、それが原因で両親が離婚してしまった過去を持っています。事件当時、父と一緒にいた愛梨は無罪を主張しましたが誰も信じてくれず、さらに母も父を信じきれずそのことを強く後悔していました。
そんな経験から愛梨は人を信じることを信条とし、母親殺害の容疑をかけられた悟にとって最大の理解者となります。

悟もまた、小学生の時いつも加代がひとりぼっちでいることを知りながら声をかけられず、連続殺人犯から守れなかったことを強く後悔していました。
誰にも心を開かない加代に悟は「雛月にだけは嘘をつかないって決めたから」と誓い、その強い気持ちが徐々に加代の信頼を得ていくことになります。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

また勇気も大切なテーマ。悟が幼少期に親しくしていた白鳥潤はひとりぼっちの子どもに声をかけて話し相手になってあげる心優しい青年。彼の口癖が「勇気を出して」だったので、悟は彼のことを「ユウキさん」と呼んでいます。
真っ昼間に子どもに声をかけるその様子は周囲の何も知らない人々からは怪しまれたり陰口を叩かれることもあり、結果的にユウキさんが連続誘拐殺人事件の犯人として逮捕される原因にもなってしまいます。
それでも「勇気出していこう」という彼の口癖は悟や加代たちの大きな力となっていくのです。

1クールで完結する傑作

星の数ほど次から次へとアニメが出てくる昨今、長期アニメには時間的余裕がなくて中々手が出せない……という人にも本作はオススメ。たった12話で完結する名作アニメは貴重です。

作画も綺麗で安定感があり世界観に没入できますし、OPテーマはアジカンことASIAN KUNG-FU GENERATION、EDテーマは作詞・作曲が梶浦由記さんで歌唱がさユりさんという豪華な布陣。
ちなみに11話のみOP映像が大きく変化するので見逃さないように!

人によってはネックとなるかもしれないのが出演声優。29歳の悟を満島真之介さん、10歳の悟を土屋太鳳さんとそれぞれTVアニメのアフレコ初挑戦(当時)の俳優さんが担当しています。
声優さんの演技に耳が慣れてしまっている人は違和感を抱くかも。特に序盤は違和感が強いですが、声優と俳優の違いはあっても役を演じる役者であることには違いありません。回を重ねるごとにお二人の声の演技もどんどん上手くなっていくのでぜひ食わず嫌いせず見てほしい!

ちなみに本作の放送当時はまだ原作が完結していなかったため、終盤の展開は原作と少々異なります。10話までは原作に沿っているものの、11話・12話は原作と大幅に展開が変わります。ただ結末自体は大体同じ。アニメを見てより深く物語を理解したくなった方は原作を読むのもオススメです。

主な登場人物

2006年

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

藤沼悟
29歳。東京で一人暮らししながらピザ屋でアルバイト中。人付き合いは苦手。心の中で思ったことを無意識にそのまま口に出してしまう癖がある。自分の意思とは関係なく発動する「リバイバル」というタイムリープ能力を持っている。売れない漫画家。人間関係が希薄なせいか、担当編集からは「心に踏み込めていない」とダメ出しをされていた。
CV.満島真之介
TVアニメ初出演かつ初主演。叫び声などはさすがに声優陣には敵わないものの、語りは非常に安定していて聴きやすい。表現力は俳優だけあってさすが。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

藤沼佐知子
悟の母。52歳。非常に若々しく、悟が幼い頃からほとんど容姿が変わらない。また高い洞察力と推理力を持ち、人の心を読んだかのような発言をするため、悟からは度々「妖怪」「サトリ」と心の中で形容されている。かつてはテレビ局の報道部に勤めていた。
CV.高山みなみ
代表作:「名探偵コナン」江戸川コナン、「忍たま乱太郎」乱太郎、「魔女の宅急便」キキ、ウルスラ、「らんま1/2」天道なびき
少年役のイメージが強いですが大人の女性を演じさせても最高にかっこいい。息子への愛情がとても深いのにサバサバとしていて頼もしさが声から溢れている素晴らしいキャスティング。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

片桐愛梨
17歳。悟と同じピザ屋でバイトする女子高生。快活で誰に対しても物怖じしない素直な性格。実家が田舎なため母の兄夫婦の家に住みながら高校に通っている。また両親は幼い頃に離婚している。悟が事故から子どもを助けた姿を見て親しくなり、彼に大きな影響を与える。
CV.赤﨑千夏
代表作:「キルミーベイベー」折部やすな、「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」春咲千和、「呪術廻戦」三輪霞
まっすぐで可愛らしい声がアイリにぴったり。2009年時におけるヒロインということもあり、赤﨑さんの明るい声が華やかで印象的。可愛い

1988年

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

藤沼悟
10歳。父親は生まれてすぐ離別しており母子家庭。人付き合いが苦手だったがユウキさんの助言と、「戦え!ワンダーガイ」というヒーロー漫画に大きな影響を受ける。しかし自分や他人の心に踏み込むのが苦手で、常に自分を演じている感覚に悩んでいた。2006年からリバイバルした後は加代やヒロミたちを誘拐殺人から守るために未来から来たことを隠しながらひとり奔走する。
CV.土屋太鳳
TVアニメの出演はこれが初にして唯一の作品。序盤は違和感が強いが回を重ねるごとにどんどん演技力が進化していく。2021年公開のアニメ映画「アイの歌声を聴かせて」でも主演を務めている。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

雛月加代
悟のクラスメイト。1988年時のヒロイン。母子家庭で母とその愛人から虐待を受けている。卑屈な性格も相まってクラスでは浮いた存在。寡黙で口癖は「バカなの?」。本来の1988年では悟とはあまり親しくなく、連続誘拐殺人事件1人目の被害者となってしまう。
CV.悠木碧
代表作:「魔法少女まどか☆マギカ」鹿目まどか、「戦姫絶唱シンフォギア」立花響、「薬屋のひとりごと」猫猫
困った時の悠木碧になりつつある女性声優界のエース。心を閉ざしたひとりぼっちの加代が悟に心を開いていく心境の変化を繊細に演じている。序盤のとあるシーンでの悲痛な叫びが忘れられない。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

ケンヤ
悟のクラスメイトで友人。非常に大人びており頭脳明晰。常にみんなから一歩引いており、加代が虐待されていることにも薄々気づいていたが諦観していた。リバイバル後は悟の変化にいち早く気づき、ケンヤにも心境の変化が現れていく。
CV.大地葉たいちよう
代表作:「プリンセス・プリンシパル」ドロシー、「かげきしょうじょ!!」星野薫、「魔女と野獣」ギド
少し低めの落ち着いた声が特徴的な女性声優さんでボーイッシュな女性役や少年役を演じることが多い。ケンヤは初の少年役。この当時からすでに最高のイケボ。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

ヒロミ
悟のクラスメイトで友人。名前も見た目も女の子のようだが男の子。穏やかでおっとりした性格。加代に猛アプローチする悟を「悟くん大胆~」と顔を赤らめるのがお約束。本来の1988年では連続誘拐殺人事件3人目の被害者。
CV.鬼頭明里
代表作:「鬼滅の刃」竈門禰豆子、「ようこそ実力至上主義の教室へ」堀北鈴音、「地縛少年花子くん」八尋寧々、「アオのハコ」蝶野雛、「シャドーハウス」ケイト
禰豆子役で一躍時の人となった声優さん。放送当時はデビュー3年目で、今よりかなり声が高い。少年役はちょっと珍しい。良く聴かないと誰か分からないかも。

出典:TVアニメ「僕だけがいない街」公式サイトより

八代学やしろがく
悟たちのクラス担任。20代後半。明るく面倒見が良く、生徒たちに親身に接する。加代の虐待にも気づいており悟より早く行動に移していた。悟にとっては良き相談相手であり、父のいない悟は次第に父のように慕うようになっていく。
CV.宮本充
代表作:「こちら葛飾区亀有公園前派出所」中川圭一、「血界戦線」スティーブン・A・スターフェイズ、「文豪ストレイドッグス」森鴎外
この作品で宮本さんを知りファンになったという人も多いのでは。とにかくかっこいい。そしてその演技力に脱帽。とりあえず見てくれ。

白鳥潤
23歳。近所に住む青年。軽度の吃音持ち。ペーパークラフトが得意で紙飛行機を良く作っている。ひとりでいる子どもに声をかけて、その子に友達ができるよう「勇気を出して」とアドバイスをしていたことから悟は「ユウキさん」と呼んでいた。勤務時間の関係で昼間に出歩いていて子どもに声をかけるせいで、周囲の人々からは良くない噂を立てられ、連続誘拐殺人事件の犯人に仕立て上げられてしまう。
CV.水島大宙
代表作:「コードギアス反逆のルルーシュ」ロロ・ランペルージ、「イナズマイレブン」基山ヒロト、「Fate/Grand Order」シャーロック・ホームズ

柳原美里
悟のクラスメイト。気が強く少々乱暴な性格。加代とは過去に遺恨がありそれが理由で今も不仲。彼女をおとしめるためにとある濡れ衣を着せるが失敗してクラスから浮いた存在になってしまう。
CV.木野日菜
代表作:「Buddy Daddies」海坂ミリ、「終末トレインどこへいく?」東雲晶、「【推しの子】」ツクヨミ、メダリスト「三家田涼佳」

「僕だけがいない街」はどこで見られる?

「僕だけがいない街」は2025年2月現在「dアニメストア」や「U-NEXT」などで見放題配信されています。

※本ページの情報は2025年2月時点のものです。
最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。

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少し懐かしいアニメや名作をレビューするこのシリーズは今後も随時更新予定です♪

この先「僕だけがいない街」の重大なネタバレ及び真犯人の正体について触れています。

ネタバレ注意(押すと開きます)

ネタバレ無しの記事を書く予定でしたが、どうしても語りたくなったので少しだけ。

僕街を初めて見たのはもう数年前なのですが10話ラストの八代先生には当時ものすごい衝撃を受けたのを今でも覚えています。悟と同じく信じ切っていたのでなおさらショッキングでした。

今回は序盤からずっと八代先生の言動や表情などに注目しながら視聴。西園も宮本充さんが演じているので声がわかる人はそこで怪しいと気づいてしまうのだけど、それ以外は本当に上手く隠してるんですよね。だからこそ10話の車内でのあの豹変が最高に活きてくる。

八代先生が本性を現す前、悟に語りかける声が少しずつ低く怪しくねっとりしていく変化が本当にゾクゾクしました。それまではどう聴いても爽やかで優しくて頼れる声なんですよ。そこから徐々に不気味さが顔を出してくる、あのじわじわと低くなっていく声が鳥肌モノ。

宮本さんは子どもの頃から知らずに声を聴いていた声優さんですが、はっきりと意識したのはこの作品が最初かもしれません。そして大好きになりました。
温かみのある声も出せるのに、心底冷たい無機質な声の時のギャップが大好きです。
あの10話だけ何回もリピートしたいくらい好き……。

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