少し懐かしいアニメをレビューするこのシリーズ。あまり知られていない隠れた名作や、最近アニメを見始めた人にもぜひ見てほしいオススメアニメなどを取り上げていく予定です♪
ちなみに前回の記事はこちら↓
そして今回レビューするのは2023年に放送されたTVアニメ「ヴィンランド・サガSEASON2」です。
この記事には「ヴィンランド・サガ」1期及び2期に関するネタバレがあります。閲覧は自己責任でお願いします。
「ヴィンランド・サガSEASON2」とは?
2019年に放送された「ヴィンランド・サガ」の続編で、奴隷身分に落とされたトルフィンのその後が描かれます。
激しいバトルアクションやトルフィンの復讐劇が描かれた第1期に比べると派手さはなく、全体的に鬱々とした展開が続きますが、1期を見た人には絶対に2期も続けて視聴してほしい名作です。
アニメーション制作会社が第1期ではWIT STUDIOだったのが第2期ではMAPPAに変更されているものの、主要スタッフはそのままのためちょっと雰囲気が変わったかな程度でむしろ全体的なクオリティは上がっている印象。
特に作画に関してはより丁寧かつ細部まで緻密に描かれている印象。表情ひとつひとつに凄みがあり、髪の毛一本まで描き込まれている他、手の皺やボロボロになった爪のひび割れすら再現されておりMAPPAの本気度を感じます。
ちなみにWIT STUDIOからMAPPAに引き継がれた作品としては他にも「進撃の巨人」があります。
奪う側から奪われる側へ
父トールズを殺された恨みから仇敵アシェラッドへの復讐だけを糧に生きてきた少年トルフィン。しかし第1期の最終回でアシェラッドはデンマーク王子クヌートによって殺害され、唯一の生きる理由を失ってしまいます。さらにクヌートに斬りかかった罪から奴隷身分に落とされるという衝撃の結末を迎えました。
第2期はそれからおよそ1年後、イングランド人農夫の青年エイナルが奴隷として買われたケティル農場で、無気力に生きるトルフィンと出会うところから物語は始まります。
望んだことではないとはいえ、故郷を出てから奴隷に落とされるまでの約11年間ヴァイキングの戦士として多くの人間を殺してきたトルフィン。
奪い破壊し蹂躙する側だった彼が今度は、奪われ破壊され蹂躙される側の奴隷となったことで、今まで自分が犯してきた罪に初めて気づくことになります。
これはそんなトルフィンが自らの罪に向き合い、贖罪を誓うまでの物語です。
トルフィンを導く2人の戦士
奴隷に落ちてから毎晩のように悪夢にうなされるトルフィン。夢の中でいつもトルフィンは戦場を駆け回り、敵や罪のない人々を殺してまわります。そして最後は自分が殺してきた者たちが亡者となり襲いかかり崖から落ちてしまう……。
ある時、農場で働く奉公人たちとの乱闘のさなかで記憶を失ったトルフィンは今まで以上の悪夢――亡者たちが永遠に終わらない殺し合いを繰り返す地獄のような悪夢に見舞われます。
そこで再会したのはかつての仇敵アシェラッド。
力と暴力に取り憑かれ死んでもなお殺し合いを続けるおぞましい地獄で、トルフィンもまたいつかどこかで自分が殺した亡者たちによって引きずり込まれそうになります。
殺した者の顔も名前も覚えていないことに気づき絶望するトルフィンに、その罪を背負ったまま前に進めと背中を押したのは意外にもアシェラッドでした。
トールズを殺しトルフィンを戦いに引きずり込んだ張本人が今度はそのトルフィンを「本当の戦い」へと導く、あまりにも美しい流れです。
このエピソードが描かれた第9話「誓い」はトルフィン役の上村祐翔さんのお芝居も強烈でした。
悪夢の中で崖から落ちていく時の恐怖に塗れた絶叫、殺し合いの連鎖が続く地獄に恐れおののく声、自分が殺した者たちへの後悔と懺悔、亡者を背負ったまま崖を這い上がろうとする魂の叫び。
全身全霊をかけてトルフィンの感情全てをぶつけたようなお芝居には鳥肌が止まりませんでした。
この他にも第2期を通して上村さんは生気を失った虚無のトルフィンや、エイナルや農場の人々との交流を経て人間らしさを取り戻していく繊細な感情の機微、戦士の時のように怒りを爆発させる迫力ある演技など、複雑で変化し続けるトルフィンを見事に演じきっています。
血と茨の道を突き進む孤高のクヌート
初登場時は美少女と間違われるほど中性的で臆病だったクヌート。しかし忠臣ラグナルの死や愛の本質を悟ったことなどから豹変し、その後アシェラッドと父スヴェン王の死によりさらに王として覚醒していきます。
この世に本物の愛はないと知り、地上に楽土を建設することを目的とするクヌート。けれどそのためならばどんな非情な手段もいとわない冷酷な王へと変貌。
その姿はまるでかつて憎んでいたはずの父スヴェン王と重なるようで、クヌートもまた王冠の呪いから逃れられなくなっていきます。
彼の前に度々、スヴェン王の生首が亡霊となって現れ、自分と同じ道を歩むクヌートに皮肉の言葉を投げかけます。何よりも皮肉なのは、王となったクヌートが唯一心を許せる相手がスヴェン王の亡霊だということ。
クヌートもまたアシェラッドに影響を受けた人間の一人ですが、それ故に王の道を突き進むクヌートもまた目的のためなら手段は選ばない冷酷非道な方法で次々と戦況を操ります。
争いのない平和な国を作りたいという野望はトルフィンもクヌートも同じ。しかし同じアシェラッドのもとで戦を学んだ2人が、自らの信じる夢のため全く違う道を選ぶのが何とも味わい深いものがあります。
王となったクヌートと奴隷の身に落ちたトルフィン、2人がいつどこで再会を果たすのかも本作の見どころのひとつ。
ケティル農場の人間ドラマ
トルフィンとエイナルが奴隷として買われた農場でも様々な人間ドラマが巻き起こります。
2人を奴隷として買い取り、自由身分を自らの手で買い取れるように土地を貸し与えるほど心優しい大地主のケティル。
美しく穏やかな性格でケティルの愛人でもある奴隷アルネイズ。
次期当主でありながら反抗期真っ只中でお調子者のケティルの息子オルマル。
好戦的で戦好き、何よりも名誉と誇りを大事にするオルマルの兄トールギル。
気難しいが誰よりも人格者な先代当主のスヴェルケル。
農場の用心棒“客人”のリーダーで、トルフィンと渡り合うほど剣の実力者でもある蛇。
一見平和で自由に見える農場、しかしそこで暮らす人々は誰も彼もがいろんな顔を持ち、時にはトルフィンを導き時には対立し殺し合うことも……。
第2期の裏主人公とも言えるオルマルが若気の至りで起こした失態から農場に厄災をもたらし、人間的に大きく成長する姿は本作の見どころのひとつ。
暴力や殺し合いが日常茶飯事の世界で、戦いから逃げることは負けではなく、戦わないことこそ本当の勇気なのだと教えてくれる残酷で美しい物語です。
ただすっきり気持ちの良い結末を迎えるエピソードはほとんどなく、陰鬱で救いのない最期を迎えるキャラクターもいるため視聴には覚悟が必要とされるかもしれません。首や手足が飛んだり残酷な描写も多いので、グロ耐性がない人も要注意。
「ヴィンランド・サガSEASON2」の主な登場人物
トルフィン
主人公。仇敵アシェラッドの死後はケティル農場で無気力に生きていたがエイナルとの出会いで少しずつ人間らしさを取り戻していく。すっかり髭面だけどまだ10代。
CV.上村祐翔
代表作:「文豪ストレイドッグス」中島敦、「ツルネ」鳴宮湊
1期の時の荒々しさがなくなり序盤は感情のない無機質な声、そこから徐々に感情が乗り始め最終的には真っ当な生気を取り戻していくお芝居の変化に注目。終盤での昔のキレっぷりが蘇る辺りは特に鳥肌モノ。
エイナル
もう一人の主人公。イングランド人。奴隷としてケティル農場に買われトルフィンと出会う。元農夫で農業に詳しく誇りを持っている。明るい性格でトルフィンとはぶつかりながらも無二の親友となっていく。アルネイズに一目惚れ。
CV.武内駿輔
代表作:「アナと雪の女王」オラフ、「アイドルマスターシンデレラガールズ」プロデューサー
視聴者が一番感情移入する立ち位置ということもあり、現代の若者らしいノリで演じる一方、喜怒哀楽がはっきりとしており感情の振れ幅を見事に演じている。声は渋いのに若さ故の感性を持ち合わせている武内さんがぴったり。
クヌート
デンマーク王家の第二王子。父の先王スヴェンと元忠臣アシェラッドのように武力を持ってイングランドを統治していく。度々スヴェン王の生首が幻覚として現れ苛まれている。1期の頃とは別人のようになり剣の腕も上達した。
CV.小野賢章
代表作:「黒子のバスケ」黒子テツヤ、「ハリー・ポッターシリーズ」ハリー・ポッター
1期の終盤に比べるとさらに声が低くなり王としての威厳が増した。常に本心を押し殺し誰にも本音を明かさない、でも時々感情が漏れ出すような繊細で重厚なお芝居が見どころ。賢章さんが演じた中でもおそらく最も低い声かつ珍しい役どころ。
アルネイズ
エイナルが一目惚れしたケティル農場の奴隷でありケティルの愛人でもある。美しく心根も優しい。彼女の存在が後にトルフィンとエイナルに多大な影響を与えることになる。2期中盤からの超重要キャラクター。
CV.佐古真弓
代表作:「虚構推理」桜川六花
吹き替えメインの声優さんで主にスカーレット・ヨハンソンやノオミ・ラパスなどを担当。そのためお芝居が非常に生々しくアルネイズの存在感を際立たせている。特に涙ながらに話すシーンやうめき声などがアニメで良く聞く演技とは全くの別物で、リアリティが凄まじい。
ケティル
トルフィンやエイナルを奴隷として買ったデーン人の大地主。自らも畑で働き、奴隷相手にも親身に接する優しい人物。その昔は戦で大活躍をした「鉄拳ケティル」と呼ばれていた。反抗期真っ只中のオルマルにいつも頭を悩ませている。良くも悪くも人間の弱さを体現したようなキャラクター。
CV.手塚秀彰
俳優、アニメ、吹き替えと非常に幅広く活躍している声優さん。吹き替えではサミュエル・L・ジャクソンなどを主に担当。心優しき農場の地主と息子らに振り回される父親、そして人間の弱さ脆さなど複雑な役柄のケティルを見事に表現。
オルマル
ケティルの息子。次期当主だが反抗期真っ只中で一人前の戦士として認められようとイキがっている。お調子者で後先考えないが実は小心者で臆病。早く認められたいという焦りからとんでもない失態を犯し農場に厄災をもたらしてしまう。
CV.林勇
代表作:「ハイキュー!!」田中龍之介、「東京リベンジャーズ」佐野万次郎
ハイキュー!!でブレイクしたが実は子役出身で芸歴はかなり長い。オルマルは得意とするヤンチャな役柄だが、臆病で泣き虫、人間的な未熟で情けない一面を全面に押し出しており演技力の高さがビシビシ伝わってくる。第21話「勇気」での名演は必聴。
トールギル
ケティルの長男。クヌートの従士。好戦的で戦好き。戦士としての名誉と誇りを何よりも重視している。臆病者には容赦がなくそれは相手が家族でも同じ。戦士としては非常に有能で、大勢の戦士相手でも余裕の戦いぶりを見せる。
CV.楠大典
代表作:「テニスの王子様」真田弦一郎、「TIGER & BUNNY」ロックバイソン/アントニオ・ロペス
アニメ・吹き替えで大活躍のベテラン声優。大柄で筋肉質、勇ましく粗野なキャラクターがとにかく似合う。トールギルもハマり役。ハマり役すぎて微塵も違和感がない。声の圧もすごい。
スヴェルケル
ケティルの父で先代当主。農場内の小さな家で一人暮らししながら畑を耕している。非常に気難しいことで知られているが実は面倒見が良く奴隷相手でも対等に接する。ケティルとの親子仲は微妙。蛇とは喧嘩するほど仲が良い。
CV.麦人
代表作:「Dr.STONE」カセキ、「マッシュル‐MASHLE‐」ウォールバーグ校長
近年のアニメでおじいちゃん声と言えば大体この人。悪役から人の良いおじいちゃんまで変幻自在の大ベテラン。
蛇
ケティル農場の用心棒「客人」たちのリーダー。蛇は通り名。奴隷相手にも気さくで公平だがシビアで敵とみなした人物には容赦がない。トルフィンと渡り合うほどの剣の実力者。第2期のイケおじ枠。最高にかっこいいので見よう。
CV.小松史法
代表作:「ジョジョの奇妙な冒険」ジャン・ピエール・ポルナレフ
みんな大好きポルナレフ役で一躍有名になった声優さん。吹き替えがメイン。スヴェルケル相手に軽口を叩く飄々とした性格と、敵相手に向ける冷徹さ、声を荒げた時の迫力などとにかくかっこいい上に上手い。
レイフ
亡き親友トールズとの約束を果たすため、行方不明のトルフィンを10年以上探し続けている商人。昔は陽気なおっちゃんだったがトルフィン探しの旅でだいぶ老け込んだ。非常に義理堅く人の良い人物。
CV.上田燿司
代表作:「ジョジョの奇妙な冒険」ロバート・E・O・スピードワゴン、「葬送のフリーレン」アイゼン
ここ10年ほどのアニメで名前を見ない時期がないほどの名バイプレイヤー。イケメンから冴えないおじさんまであまりにも役幅が広すぎて驚かされる。
「ヴィンランド・サガSEASON2」はどこで見られる?
「ヴィンランド・サガ」は第1期・第2期共に2024年7月現在Amazon Prime Videoにて全話見放題配信中!
とりあえずどんな話か気になる人は原作コミックス1巻もオススメ↓
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※本ページの情報は2024年7月時点のものです。
最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
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